大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)4553号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は昭和二三年五月二六日被告から東京都荒川区尾久町一〇丁目一三六八番の三宅地五七坪六合一勺を建物所有の目的で賃貸し空地のままにしてあつたところ、被告は昭和三六年一一月二五日本件土地を訴外高橋正三に売渡した。土地の賃貸人がその土地所有権を第三者に譲渡するに際しては賃貸人の地位を共に譲渡すべきはもとよりのこと、借地人を関与させた契約による等して譲受人に賃貸人の地位を確実に承継せしめ、借地権について対抗要件か欠しているときは借地人をしてこれが取得に便宜を与える等適当の措置をとる必要がある。しかるに被告は故意又は過失によつて前記措置をとることなく、原告に無断で本件土地を譲渡した。原告が同年一一月六日本件土地に建物を建てようとしたところ高橋及び同人と代物弁済の予約をした朴から妨害をうけ、高橋は原告にたいし本件土地の使用を拒否した。被告が故意又は過失により前記措置をとることなく本件土地を売渡したことによつて、本件土地につき対抗要件を具備していない原告は本件土地の借地権を喪失せしめられ、その価格金五二四万円の損害をうけたから被告にたいし不法行為又は債務不履行を理由としてその損害の賠償を求める、と主張した。

被告は、高橋に本件土地を借地権付で売りわたしたから、高橋は本件土地所有権とともに賃貸人たる地位を承継した。かりに当然に賃貸人の地位が高橋に移転しないとしても、被告・高橋間の契約は第三者たる原告の契約を含むものであつて、被告は原告に対し事前事後に本件土地売買の事実を通告したから、原告は高橋にたいし受益の意思表示をすることによつて高橋にたいする関係で本件借地権を存続させることができた、被告は本件土地の売買に原告を関与させる法律上の義務もないし、被告に本件借地料設定登記義務もない。と抗弁した。

判決は被告は高橋にたいし借地権付で売買であると認定した上、被告に債務不履行ないし不法行為上の責任はないとしてつぎのとおり説明している。曰く。

(なお後出の賃貸中の土地を借地権の負担のない土地として売買した場合の土地賃貸人の責任に関する判決例と比較対照されたい)

「右認定の事実によれば、被告は、本件借地権付で本件土地を高橋に売り渡し、高橋に対し本件土地の所有権とともに賃貸人の地位も移転したのであるから、被告が右売買によつて本件借地権を喪失させたものとすることはできないし、土地の賃貸人が借地権付でその土地の所有権を第三者に譲渡するには、賃貸人と譲受人が当事者となつて契約を締結すれば足りるところであつて、その際、賃貸人に原告主張のような義務があると解することはできないから、仮令、原告が、後日、譲受人たる高橋によつて本件借地権を喪失せしめられたとしても右売買をもつて、ただちに、本件借地権の喪失と相当因果関係に立つ被告の義務違背と認めることはできない。原告の不法行為に基く請求は、爾余の点について判断するまでもなく失当である。

つぎに、債務不履行に基く請求について判断するに、前認定によれば、被告に伺等債務不履行がないことが明らかであるから右請求も爾余の点について判断するまでもなく失当である。」

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