大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)5198号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕原告は電気機械器具商であるが、昭和三二年九月下旬訴外有泉を雇入れるさい、被告ら両名は有泉のため身元引受をし、事故発生の場合被告ら両名は連帯して原告に損害賠償をなすべき旨を約した。ところが有泉は昭和三四年五月下旬ころから昭和三五年七月上旬ころまでの間原告の得意先から代金を集金して業務上保管中金四七七、八六五円を着服横領し、原告に同額の損害を加えたから、被告らにたいし前記身元引受契約に基いて右金員の支払を求めた。

被告らは、(1)身元保証法第三条第一号によれば使用者は被用者において業務上不適任又は不誠実な事跡があり、そのため身元保証人の責任を惹起するおそれがあることを知つたときは遅滞なく身元保証人に通知しなければならないのに、原告は有泉に対し昭和三四年一一月から退職まで給与を減額したような事由があつたのにこれを通知せず、(2)また同条第二号では被用者の任務を変更し、そのため身元保証人の責任を加重しまたは困難ならしめるときは、使用者は遅滞なく身元保証人に通知しなければならないのであるが、原告は有泉を採用後わずか二ケ月で課長職に任じ身元保証人の責任を加重したのに被告らに通知しなかつたから被告らは保証の責任を負わない。かりに被告らに責任があるとしても判示のような事情のある本件においてはその額は減額せらるべきであると抗争した。

判決は被告ら主張の(1)(2)の事実は保証人の責任を消滅せしめる事由と認めがたいとし、これら事実をも考慮に入れて同法第五条により被告らの賠償すべき額を二〇〇、〇〇〇円を以つて相当とすると判断し、つぎのとおり述べている。

〔判決理由〕有泉の原告会社への入社は原告会社代表者西野周一が親しい旧友としてむしろ自分から働きかけて入社させたものであり、逆に被告らの身元保証は有泉の入社には何ら関係なく、むしろ社則による形式的なものとしてなされたもので、原告会社としては重きをおいていなかつたし、また被告らとしてはほとんど長年交際のなかつた有泉から頼まれ、もとの中学または中学の友人としての義理合いから儀礼的に保証の書類に署名、押印したものであると解せられ、また有泉の横領行為は多分に会社内部の事務処理のずさんな点からその間隙を利用して行われたものであり、とくにその非行は昭和三四年五月下旬頃から行われており、その後の同年二月頃には帳簿の整理がわるいとの理由で西野周一がとくに指示して歩合給の支給をやめているのであつて有泉の事務処理のずさんは上司がよく承知してるにかかわらずその方策を講ぜず、また依然部下の集金の督促をもすべき課長職のままとして監督も強化せずに、昭和三五年七月上旬まで有泉の非行を知らなかつたのであつて、監督を強化し、事務処理を改善したならば有泉の非行がなくなるかまたはより早期に発見できたとも推認される。「身元保証ニ関スル法律第三条」に定める通知がなされなかつたからといつて身元保証契約がただちに当然失効するものではなく、また本件において前記帳簿の不敷理ないし歩合給の停止および課長職への昇任はその内容からみてただちに、身元保証人たる被告らへ通知すべき程度の不誠実な事跡または任務の変更とも解しがたいが、前記のような事情は被告らの責任の決定にあたつては十分しんしやくすべき事項であり、その他被告らの収入等前記認定の一切の事実を勘案すれば、被告らの身元保証契約にもとづく連帯支払すべき賠償責任額としては二〇〇、〇〇〇円の限度にとどめるのが相当であると解する。(中川哲男)

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