東京地方裁判所 昭和37年(ワ)529号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実と争点〕原告は被告から昭和三五年一〇月二八日東京都中央区日本橋人形町三丁目一番地の二同番地の三所在の三階建家屋一棟とその敷地一五坪の被告名義の賃借権を代金六、五〇〇、〇〇〇円で買受ける旨合意し、同日代金全額を支払つた。ところが右土地の所有者大川一郎は昭和三七年一月二二日賃借人である被告にたいし、右賃借権譲渡が賃貸人の同意を得ずになされたのを理由に右土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、さらに同年三月二日被告にたいする土地明渡の訴訟を東京地方裁判所に提起し、被告は同年四月一五日の口頭弁論期日において右大川の請求を認諾し、被告は前記売買契約に基き右借地権を原告に移転することが不可能となつた。ところで右は他人の権利を以つて売買の目的となし、売主がその売却した権利を取得してこれを買主に移転すること能わざるに至つた場合と実質上同一であるので、原告は被告に対し昭和三七年六月二一日付内容証明郵便で前記借地権売買契約を解除する旨の意思表示をなし、右は同月二二日被告へ到達したから、売買代金の返還を求める、と主張した。
判決は原告の右主張を採用し、つぎのとおり説明している。
〔判決理由〕原告は前記売買契約によつて有効に本件借地権を取得したが、右借地権の譲渡につき地主の承諾を得ないかぎり原告はその借地権の取得を右地主に対抗することができない。
ところで右借地権の譲渡に対する地主の承諾は、地主である訴外大川のなした前記(一)記載の解除の意思表示及び被告のなした同記載の認諾によつて不可能となり、しかもそれは前記のとおり買主である原告の責に帰すべからざる事由によるものである。ところで、右は他人の売買ではないが、他人の権利を以て売買の目的となし、売主が其の売却した権利を取得して之を買主に移転すること能わざるときと比較し、買主に契約解除権を付与すべき必要性に於いては何等差異がない。
しかも原告は原告主張の日、被告に対し、前記(一)記載の借地権売買契約を解除する旨の意思表示をなし、右意思表示は原告主張の日被告に到達したことは当事者間に争がない。
よつて前記(一)記載の売買契約は有効に解除され、従つて被告は原告に対し右借地権の代金を返還する義務がある。(柳川真佐夫)