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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)7022号 判決 1962年12月20日

別紙訴状記載のとおり

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

原告の請求の趣旨及び原因は別紙訴状記載のとおりであつて、被告の答弁は別紙記載のとおりである。

証拠関係は証拠目録調書記載のとおり。

証人内山宏、藤田千代松の証言及び甲第一号証の記載と形状によれば、本件手形は被告会社において融通手形(金額二〇万円、支払期日昭和三七年六月一八日、支払地豊島区、支払場所株式会社東京相互銀行池袋支店、振出地板橋区、振出日及び受取人白地で被告が肩書地を附記して振出人として記名押印したもの)として使用した後これを回収し、「約束手形」なる印刷の「手」の字の部分からその下部の印紙貼用部分を引き裂き、廃紙として被告会社の社長の机の抽斗のなかに入れてあつたものを、被告会社の事務員であつた内山宏がひそかに持ち出し、加藤某を介して、セロテープで引き裂かれた部分を継ぎ合せ、かつ、満期を昭和三七年八月一八日と改ざんして信和薬品株式会社の社員中村某に交付し、白地が補充され、転々して原告の手中に帰したものであることが認められる。他にこの認定を左右するに足る資料はない。

右に認定したところからすれば、被告会社の手形廃棄の方法が不徹底だつたために、それが一因となつて本件手形が流通におかれるに至つたものであるといわなければならないが、とにかく被告会社は廃棄処分しているのであるから、廃棄の仕方が不十分であつたこことを理由として被告会社の表見責任を問うことは相当ではなく、本件は内山が被告会社の記名押印を擅に流用して手形を偽造したものとみるのが相当である。

よつて、被告会社に対して振出人の責任を問う原告の請求は理由がないものと認め、主文のとおり判決する。

(裁判官 石井良三)

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