大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)7493号 判決

○当事者

原告

(省略)

右訴訟代理人弁護士

菊地政

増沢照久

被告

上栄太郎

被告

吉田興業株式会社

右代表者代表取締役

吉田鶴用

右両名訴訟代理人弁護士

磯崎良誉

鎌田俊正

○主   文

1 被告らは、各自原告に対し金一、二四四、八九七円およびこれに対する昭和三六年九月一日以降完済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、被告らの平等負担とする。

3 この判決は、第一項にかぎり、仮に執行することができる。

○事   実

原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決および仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

一、昭和三五年八月二八日午前八時二〇分頃千葉県東葛飾君浦安町猫実三九一番地先県道上において原告の乗車していた足踏二輪自転車と被告上栄次郎の運転する大型貨物自動車(第一は六〇七八号。以下「被告車」という。)とが接触し、よつて原告はその場に転倒して骨盤骨折、腸部打撲、後腹膜血腫、膀胱出血、卵巣嚢腫破裂、右下腿挫創、外陰部挫創の傷害を受けた。(以下省略)

○理   由

一、請求原因第一項の事実のうち、原告の受けた傷害の部位を除くその余の事実(事故の発生および原告の負傷)は、当事者間に争いがない。

しかして(証拠―省略)を綜合すれば、原告は、本件事故によつて骨盤骨折、腸部打撲、後腹膜血腫、膀胱出血、卵巣嚢腫破裂、右下腿挫創、外陰部挫創の傷害を受けたことが認められる。

二、そこで被告らの責任原因について判断する。

(1) (証拠―省略)を綜合すれば、事故の現場は、東西に走る幅員約六・二〇米のアスフアルト舗装道路(なおその両側に幅員約二・六米および三・七米の非舗装の、砂利敷歩道がある)と南北に走るアスフアルト舗装道路とが丁字形に交差する交差点の入口附近であつて、事故の当時被告上は、被告車を運転し、時速約二〇粁の速度で事故の現場附近を西方から東方へ、前記交差点に向つて進行して来たところ前方約三〇米の地点を同道路の左側に寄つて原告が足踏二輪自転車に乗り、同方向に進行しているのを認めたが、そのまま進行を続け、事故地点より一〇米位手前のところで原告を追越したこと、しかして交差点に殆ど人通りもなかつたことから、一時停止をすることなく速度を時速約一〇粁に減速して交差点を左折しようとしたところ、その際被告車が同道路の左側に避けていた原告に余りにも接近していたため、被告車の左側後輪の後方泥除部分が原告の乗つていた自転車の右ハンドルに接触し、その結果原告は、自転車に跨つたまま、右足を自転車の下にし、左足は自転車の上にして、進行方向と反対側に倒れ、しかもサドルは無惨にもひん曲り、原告の股に喰い込んだことが認められる。右認定に反する被告上栄次郎の供述部分は措信できない。

右認定事実に徴すれば、本件事故は被告上の過失に基因するものということができる。けだし、右認定のごとく、被告上は、前記交差点を左折するに際し、左折の直前に同道路の左側に原告が自転車に乗つていたのを認めていたのであり、しかも同交差点には殆ど他に人通りがなかつたのであり、しかも同交差点には殆ど他に人通りがなかつたのであるから、当然原告との接触を避けるべく、同道路の中央附近から左折するなど事故の発生を回避するに適切な措置をとるべき義務があるのにこれを怠たり、漫然原告に接近しすぎたまま左折したため、本件事故が発生したのであるから、被告上の過失ある運転行為がもつぱら本件事故発生の原因をなしていることは、明らかである。従つて、同被告は、直接の不法行為者として民法第七〇九条の規定により原告が受けた後記損害を賠償すべき義務がある。

(2) 被告会社は、土木建築の請負および建材の販売を業とし、被告上の使用者であつて、本件事故は、被告上が被告会社の業務を執行するため被告車を運転していたときに発生したことは、当事者間に争いがない。しかして、被告車の所有者ついて原、被告間に争いがあるが、仮に被告が主張するように、被告車の所有者が訴外早川広子であつて、被告会社は同訴外人よりこれを賃借して使用していたとしても、被告会社は、右賃貸借契約によつて被告車を使用する権利を有していたのであるから、被告会社が被告車を自己のために運行の用に供する者に該当することは、明らかである。従つて、右の当事者間に争いなき事実に徴し、被告会社が自動車損害を賠償すべき責任を負うことは、いうまでもない。

三、次に原告が受けた損害につき判断する。

(治療費等)(1)(証拠―省略)によれば、原告は、本件事故による受傷後直ちに附近の葛南病院に入院して応急手当を受け、そこに四日程入院治療を受け、治療費金七、〇七八円を支出したこと、そして昭和三五年八月三一日同病院より東京の順天堂病院に転院するため、東京寝台自動車株式会社に寝台自動車を依頼し運賃金二、〇〇〇円を支出したこと、順天堂病院には昭和三六年一月二五日まで入院して治療を受け、入院加療費金一七一、八四九円を支出する外、その間に傭つた看護婦の看護料金一〇七、六二〇円を支出したこと、そして同病院を退院後は医師の指示に従い、昭和三六年一月三一日以降同年七月七日まで国立伊東温泉病院に入院加療を受け、治療費金五六、三五〇円を支出したことが認められ、他に反対の証拠はない。してみると原告は、本件事故によつて治療費等合計金三四四、八九七円を支出し、同額の損害を蒙つたものということができる。

(慰藉料)(2) 原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和一三年一二月一日(省略)間の次女として出生し、千葉県市川市の昭和学院高等学校卒業後は、新宿の文化服装学院に一ケ年程通学して洋裁を習い、爾来父母の許にあつて家事の手伝いをしていたが、本件事故によつて前記第一項のごとき傷害を受け、その治療のため昭和三五年八月二八日以降翌三六年七月七日までの間、葛南病院、順天堂病院、国立伊東病院と転々入院して治療を受けたが、遂に一生跛の身となり、しかも骨盤出口に狭窄が認められるため、将来結婚しても分娩が気遣かわれる状態にあること、そしてそれは、いうまでもなく独身女性の原告にとつて堪え難い苦痛であること、しかるに被告らは、原告に対し何ら慰藉の手段を講ずることなく今日に至つていることが認められ、他に反対の証拠はない。右認定事実と第二項において認定した本件事故の態様とをあわせ考えると、原告の受けた精神的苦痛に対する慰藉料は、一、〇〇〇、〇〇〇円を下らないものと認める。

四、以上のしだいであるから、原告は、前項(1)(2)の合計金一、三四四、八九七円の損害を受けたものと認められるところ、原告の自陳によれば、本件事故につき原告は自動車損害賠償責任保険金一〇〇、〇〇〇円を受領しているから、これを控除した残額金一、二四四、八九七円が結局原告の受けた損害となる。

してみると原告が被告に対し右損害金一、二四四、八九七円およびこれに対する損害発生後であること前項認定事実に徴して明らかな昭和三六年九月一日以降完済に至るまでの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求はすべて理由があるから、正当として認容することとする。

よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文の規定を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項の規定を、それぞれ適用して主文のとおり判決する。(裁判官 吉野衛)

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