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東京地方裁判所 昭和38年(レ)105号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕控訴人は昭和三一年九月一八日武蔵野市にたいし被控訴人所有の本件四棟の建物に対する昭和二六年度第三期から第五期まで、昭和二七年度第一期、第二期の各固定資産税、手数料、延滞金、加算金合計六〇、二六〇円を被控訴人に代つて納付した。控訴人の前記租税代納は利害関係を有する第三者の弁済であるから有効な弁済である。すなわち控訴人は被控訴人にたいし昭和二七年九月一八日成立した調停に基き控訴人所有の本件建物敷地を被控訴人に賃貸していたが、被控訴人が約定賃料を支払わないので、これを理由に契約解除の意思表示をし、昭和三〇年一一月七日前記調停調書第八項に基き、同地上にある被控訴人所有の本件建物の収去命令をえた。そして控訴人は執行吏に執行委任をしたところ木村執行吏は本件建物には被控訴人の固定資産税等の滞納のため武蔵野市から差押をうけてをり、これが解除されなければ収去の執行はできないとしてこれを拒んだので、控訴人は執行を速に行うため滞納金を代納した。仮に租税滞納処分による差押が法律上建物収去の執行の妨害にならないとしても、公売により第三者が建物を取得するに至つた場合は建物の敷地の使用について法律上紛糾が予想されるので、こうした事態をさけるためにも前記代納を必要とするから、控訴人は代納について利害関係を有するものであると主張した。

被控訴人は、控訴人は利害関係のない第三者である。租税の滞納によつて財産の差押をうけても、この差押は他の者の強制執行を阻止する効力を有しない。したがつて執行吏が建物収去の執行を拒んだとすれば執行の方法上の異議申立等の救済方法によるべきであるし、また公売により第三者が所有権を取得しても控訴人は容易に承継執行文をえて建物収去の執行ができるから、いずれにしても控訴人の主張する利害関係は事実上のしかも間接的なものに過ぎないと抗争した。

判決は被控訴人の主張を容れ、控訴人は本件租税を弁済するについて法律上の利益を有する第三者にあたらないとして、つぎのとおり説明している。曰く。

「控訴人が前記のとおり代納をした当時、現行地方税法第二〇条の六に相当する規定はなく、第三者の租税の納付については、旧国税徴収法施行規則(明治三五年四月一一日勅令第一三五号)第一七条において、「徴収官吏財産ヲ差押ヘタル場合ニ於テ滞納者又ハ第三者ヨリ滞納処分費及税金ヲ完納シタルトキハ其ノ財産ノ差押ヲ解クヘシ」と規定されており、第三者が租税を代納することができることは明らかであるが、その要件及び効力についてはなんら規定がない。ところで租税は公法上の請求権ではあるが、それは一種の金銭債権であるから、第三者の代納については、民法第四七四条の規定を類推してその要件及び効力を判定するのが相当である。

四、そこで、まず控訴人が代納につき利害関係を有するかどうかを考えてみると、滞納処分による建物の差押は、建物所有者の自由な処分を制限するだけであつて、他の有効な債務名義に基く建物収去の強制執行を妨げるものではなく、建物が収去されれば、差押は効力を失うことになると解される。従つて木村執行吏が建物収去の執行を拒んだことは、法律の誤解によるものであるから、控訴人としては民事訴訟法第五四四条の執行方法に関する異議の申立により、執行を可能にすることができる。また公売により第三者が建物所有権を取得したとしても、控訴人はこれに対し容易に承継執行文の付与をえて収去の執行をすることも可能である。もちろん、かような方法をとれば執行が遅れることは容易に看取することができ、執行吏の言に従つて本件におけるように代納してしまえば、その限りでは執行は速かに行われることにはなるが、それは執行を早める一手段であるに過ぎず、代納をしなければ建物収去の執行ができないというものではないから、控訴人は本件代納については事実上のしかも間接的な利害関係を有するにとどまり、法律上の利害関係を有するものとはいえない。」

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