東京地方裁判所 昭和38年(ワ)3803号 判決
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〔判決要旨〕一、保証人の責任は被保証人のそれとは別個独立なものであるから、手形上の権利自体に関係のない原因関係上の抗弁(被保証人固有の抗弁)は原則的には保証人において、抗弁とすることはできない。しかしながら手形保証人が被保証人の手形債務の原因関係上の債務についても民法上の保証をしている場合には被保証人固有の原因関係上の抗弁をもつて対抗することができると解すべきである。
〔事実と判断〕本件手形は訴外株式会社星川製作所が訴外関口宛に振出し、被告はこれが手形保証をなしたが、関口は原告にたいし取立委任のため譲渡し原告は所持人となり、原告は本件手形の所持人として手形保証人たる被告に手形金の支払を求めたところ、被告は本件手形は月二割の高利の貸借を原因として振出されたものであるから、右消費貸借は公序良俗に反し無効であり、本件手形の振出人はこれを原因として振出された手形金の支払義務のないことを主張しうべく、保証人たる被告も亦みぎ抗弁を援用する。と抗争した。判決は後記のとおり説明して被告の抗弁を採用した。
争点二については判決は出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締等に関する法律第五条第一項を基準として月一割の利率の定めによる消費貸借は必ずしも公序良俗に反しないとしてつぎのとおり説明している。曰く。
「まず、本件手形の譲渡が、関口から原告に取立委任の目的をもつてされたものであることは、当事者間に争がない。ゆえに、振出人である訴外会社は、原告に対し、関口に対する抗弁をもつて対抗し得るというべきであるところ、被告が手形保証人として、被保証人たる訴外会社の抗弁を主張し得るかについては見解の分かれるところである。元来手形保証も附従性を有するのであるから、被保証人が手形上の権利の消滅により、債務を免れるときは、保証人もこれを抗弁とすることができることはもとよりであるが、保証人の責任は、被保証人のそれとは別個独立なのであるから、手形上の権利自体に関係のない原因関係上の抗弁(被保証人固有の抗弁)は、原則的には、保証人において、抗弁とすることができないといわなければならない。しかしながら、手形保証人が被保証人の手形債務の原因関係上の債務についても、民法上の保証をしている結果、これを原因として手形保証をしたものであるときは、直接の当事者間においては、民法上の保証に関する抗弁、したがつて、被保証人固有の原因関係上の抗弁をもつて、対抗することができると解するのが、実質的にみて相当である。本件においては、前認定の事実に徴すれば、被告は、訴外会社の関口に対する債務について民法上の保証人になることを承諾したものと認められ、かつこれを原因として、手形保証人となつたものと解されるから、訴外会社の関口に対する抗弁を主張し得るというべく、したがつて、関口から取立委任の目的をもつて本件手形の譲渡を受けた原告にも対抗し得るというべきである。」
「月一割=日歩金三二銭八厘七毛の利息の約定が公序良俗に違反するかというのに、出資の受人、預り金及び金利等の取締等に関する法律第五条第一項は、日歩金三〇銭を超える割合による利息の約定またはその受領につき、懲役もしくは罰金に処するむねを規定しているのであるから、右の限度を超える利息の約定またはその受領は、刑罰に処せられる行為として、公序良俗に違反する無効のものというべきであるが、右の限度を超えず、かつ利息制限法所定の利率を超える部分については、当該消費貸借における諸般の事情に照らして判明すべきであるところ、……によると、関口と訴外会社間の消費貸借は、訴外会社が資金に窮した末、それまでに数回融資を受けたことのある関口に懇請して金借したものであり、利息も、星川が任意に金一五万円を差し出して支払い、他方関口において、特に訴外会社ないしは星川の窮迫に乗ずるとか、著しく不当な利得を目的としたと思料される事情のないことが認められるから、以上の事情に照らすと、利息が月一割であるということのみをもつて、該消費貸借を公序良俗違反というを得ないから、この抗弁は理由がない。」(菅本宣太郎)