東京地方裁判所 昭和38年(ワ)5995号 判決
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〔判決理由〕よつて進んで、被告の公序良俗違反の抗弁について判断する。
……を総合すれば、左の事実が認められる。
被告は、昭和三六年中本件建物(貸ビル)の建設を計画し、建物の建築請負を業とする訴外会社に対し、建築費は訴外会社において一時立替負担し、被告において本件建物を他に賃貸して得る賃料、敷金等をもつて逐次支払つてゆく約定の下に、その建設を依頼し、かくて訴外会社は同年秋頃よりその建築に着手したところ、予期に反して賃借の応募者が殆どなく建築資金に窮するに至り、他より融資を受けなければ工事遂行が困難となつたところから、被告会社代表者と協議の上、的場覚太郎より貸金業者として紹介を受けた原告から金融を受けるに至つたものである。かくして、前認定のように、訴外会社は昭和三七年七月一三日原告より金一、〇〇〇万円を借受け、被告は当時未完成であつた本件建物に抵当権設定契約、停止条件付代物弁済契約等を結んだものであるが、同年一一月に至り、被告会社代表者は、当時被告会社の取締役であつた的場覚太郎より、更に建築資金として原告より金融を受けねばならない窮況にある旨告げられ、訴外会社代表者達富敬一等と相談の上、訴外会社において原告より金五〇〇万円を借受けるとともに、本件建物につき再び抵当権設定契約並びに停止条件付代物弁済契約等を締結するようになつたものである。
右認定の事実によると、原告は、本件建物建設資金として先に金一、〇〇〇万円を貸付け、更に乞われて前同様の目的のために金五〇〇万円を貸付けるに至つたものであるから、被告並びに訴外会社が本件建物の建築資金に相当困窮していたことはこれを熟知していたものであることは容易に推認されるところ、上記認定のように、(二)の金五〇〇万円の貸金債権の約定利息は日歩金一七銭の高利であり、その弁済期が昭和三八年二月二〇日であることは前説示のとおりであつて、貸付期間は三箇月余の短期間であるに対し、本件建物の(二)の貸借契約成立当時における時価は、原告が主張するように、本件建物の所有権取得と同時に被告より承継すべき本件建物の賃借人等に対する敷金返還義務に基く敷金合計金一〇、三二三、〇〇〇円並びに借地権譲渡の承認料として本件建物の敷地所有者たる北村光照に支払うべき金一、二〇〇万円を控除した結果、原告の自認する最低価格としても、なお金三二、四五一、九〇〇円の時価を有するものであるから、以上の諸事情を考慮すれぼ、前記(二)の債権につきなされた右代物弁済の予約は、暴利に過ぎ公序良俗に違反し無効であるといわねばならない。(須賀健次郎)