東京地方裁判所 昭和38年(ワ)77号 決定 1964年4月03日
債権者(申立人) 那須ストラクチヤー工業株式会社
右代表者代表取締役 那須仁九郎
右債権者代理人弁護士 榎林力
右復代理人弁護士 北川勝夫
債務者 弘工業株式会社
右代表者代表取締役 大川政弘
右債務者代理人弁護士 柳田貞吉
主文
本件破産の申立を却下する。
理由
一、債務者は昭和三八年四月一五日債務者に対する破産の申立を為し、債権の存在及び破産の原因たる事実を一応疏明した。
当裁判所はその審理のため、
(イ) 昭和三八年五月二九日午前一〇時
(ロ) 同年七月三日午前一〇時
(ハ) 同年九月一一日午後二時
と各期日を指定し、債権者代理人に告知したが、債権者側において出頭されず連絡もなかつた。
そこで当裁判所は同年一〇月九日附書面で債権者代理人に対し、事件の進行について照会したところ期日を指定して審理を進行させられたいとのことであつたので更に
(ニ) 昭和三九年一月二〇日午前一〇時
(ホ) 同年三月三〇日午前一〇時
と各期日を指定した。
しかしながら、(ニ)の期日には事案に暗い復代理人を通じて示談を考慮しておる旨連絡されただけであり、(ホ)の期日には債権者側において出頭されず何等連絡もなかつた。
二、破産申立事件の審理においては、裁判所は職権で必要な調査をすることができるけれども申立人の側においても、いやしくも自ら破産を申立たのであるから、その審理に協力すべきである。(民法第一条の趣旨参照)
そうでなければ事件の関係者にいたづらに過大な時間、労力或いは費用を空費させ、しかも充分な審理を尽すことが非常に困難である。
ところで、前記審理の経過によれば、債権者は本件審理について極めて協力的でないのみならず今後とも協力を得られる見込みはない。そのため現在本件審理の見透しのつかない状況に立ち到つている。
そして、債権者のこのような非協力的態度は、結局債権者において真実債務者の破産を求める意思が当初から存在しなかつたか或いは当初存在したのであつてももはや消滅したことに起因すると推測される。
従つて、債権者は真実破産を求める意思が既に消滅しておるのに、依然として本件破産の申立を維持していることになり、このような申立は申立権の濫用として不適法である。
その欠缺の補正ができないと認めるのでこれを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 高木実)