東京地方裁判所 昭和38年(ワ)795号・昭38年(ワ)6458号 判決
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〔判決理由〕以上の認定に従えば、訴外吉武鼎六郎と反訴原告との間に成立した本件不動産に関する売買契約は、右訴外人の債権者である原告を害するものとして取消さるべきものであることが明らかである。もつとも、債権者が詐害行為取消権の行使により、債務者の行為を取消すことができる範囲は、原則として当該債権者の債権額を限度とすべきものであると解するのを相当とすべきところ、本件売買契約の締結された昭和三七年一二月八日当時において、原告が訴外吉武鼎六郎に対して有していた債権額は金一一四万円であるのに対し、鑑定人石川市太郎の鑑定の結果によれば、本件不動産の右日時における価格は、土地、建物合わせてほぼ金八六〇万円相当であり、そのうち土地の価格は約金七二〇万円、建物の価格は約金一四〇万円相当であることが認められるのであるから、そのいずれか一方の売買を取消すことによつて、原告の主張する詐害行為取消の目的を達成できるようにもみられるが、……によれば、本件売買契約は、土地建物を一括して代金を定めてなされたものであることが認められるのみならず、本件のように土地、建物が同一の所有者に属し、それが一括して売却された場合に、土地または建物の一方のみを取消すべきものとすれば、その契約の一部取消により建物の所有者と土地の所有者が異なることになる結果、建物もしくは土地の価値及び効用は著しく低下し、一般債権者の利益は保護されない結果を招来するから、かかる場合には、たとえ取消の対象となる物件が債権額を超えているとしても取引の通念に照らし、それがあまりに過大にわたらない限り、法律行為の内容が不可分なものとして、その全部の取消を認めるのを相当とする。よつて本件では、本件不動産の売買契約全体の取消を許すべきものといわなければならない。(下関忠義 中橋正夫 日比幹夫)