大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和38年(ワ)9699号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕……によると、右売買について両者の間に作成された売買契約書には、買主は売主に対し、手付金として金二、五〇〇万円を支払い、売買当事者のいずれか一方が契約の履行に着手するまでは買主は手付を放棄し、売主はその倍額を返還して右売買契約を解除することができる、との趣旨の記載がなされている事実が認められる。しかし……を総合すると、前記土地建物の売買契約は、訴外会社が原告より資金の提供を受けてその地上に分譲アパートを建設する目的でなされたこと、残代金六七八三万円の支払については昭和三八年九月一八日金二千万円、同年一一月一八日、同年一二月一八日、昭和三九年一月二〇日、同年二月二〇日各金一千万円、同年三月二三日金七八三万円の六回に分割して支払う旨の約定がなされたこと、被告は当時「手付」がいかなる意味をもつものかを知らず、右二、五〇〇万円が手付か単なる内金かの点については全く意に介しておらず、右契約の際両者の間にこの点についての話合はなされなかつたが、訴外会社の社員が不動産取引の一般の例にならつて、契約書に前記のような解約手付の趣旨の記載をしたものであること、その金額が二、五〇〇万円と定められたのは、被告は当時本件売買の目的物である前記土地建物を担保として他から金融を受けており、この担保権を消滅させ負担のないものとして訴外会社に譲渡するためには、さしあたり少くとも二、五〇〇万円を必要としたため、訴外会社に対し、代金の内、一回分の支払として、右二、五〇〇万円を要求した結果であること、原告は昭和三八年五月二二日訴外会社の代表取締役の福田実を同道して被告方に赴き、被告に対し約定による代金の第一回分の支払として金二、五〇〇万円を交付し、被告はこれと引換えに代金の内金としてこれを受領した旨の同会社宛の領収書を福田に交付したこと、がいずれも認められる。証人小野錠太郎の証言および原告本人の供述中右認定に反する部分は措信しえない。この事実によると、右金二、五〇〇万円は、訴外会社が原告より資金の提供を受けたが、債務者たる同会社自身の支払として被告に交付されたものであり、また、右事実と、右二、五〇〇万円の本件売買代金額に対する割合とを併せ考えると、この二、五〇〇万円は解約手付としてではなく単なる内金の第一回分の支払としてなされたもので、契約書中の前記の解約手付の趣旨の条項は単なる例文にすぎないものと認めるのが相当である。(松永信和)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!