東京地方裁判所 昭和38年(行)53号 判決 1963年10月02日
原告 板垣宗男
被告 科学技術庁長官
訴訟代理人 横山茂晴 外二名
主文
原告の訴をすべて却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 <省略>
理由
試験制度は受験者の一定の学識能力について、専門的な機関の判定により審査することを目的とするものであるから、その合格、不合格の判定は、その判定結果に影響を及ぼすような試験手続の瑕疵により受験者が不利益を被つた場合のほかは、ことがらの性質上試験を実施した機関の最終判断に委ねらるべきものであつて司法審査になじまないと解すべきところ、原告の請求の一半は、原告の受験した技術士国家試験について、被告の不合格の判定を合格に変更を求めるというのであつて、ひつきよう、裁判所が訴訟手続で判定するに適しないことがらにつき裁判所の判断を求めるものにほかならないから、本来、許されない訴というべきである。
また、試験の合格、不合格の判定を裁判所が審査することができない以上、その判定自体の誤りを前提とする損害賠償請求も理由がないことは明らかであるのみならず、この種の訴においては国を被告とすべきものであつて、行政庁を被告とすることは許されないところである。
よつて、原告の訴をすべて却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条老適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 白石健三 浜秀和 町田顕)