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東京地方裁判所 昭和39年(モ)12012号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【事実】三、本件実用新案の構造上の特徴は、

(1) 底板2の中心にガス噴出孔6を穿ち、上部を開口した函状の主体2のあること

(2) ガス通過の小孔5を穿設した弾性調節座4を主体2の底板2上に嵌めること

(3) 主体2の上口端に螺入した調節用筒体3の下端をもつてガス通過孔16を有する上口端押圧座板15を介して弾性調節座4を押圧すること

にある。

四、本件実用新案の作用効果上の特徴は、調節用筒体3を回することにより、調節用筒体3の主体2に対する螺入深度が変化し、これにより弾性調節座4に対する圧力が増減して弾性調節座4のガス孔5を広狭二様に変化させてガスの通過量を調節できること、である。(中略)

(1)燃料匣1を貫いて装着する稍長筒状の主体2を有し、主体2の内側に雌ネジを形成した受縁2aを設け、受縁2aの下側から主体2を貫いて透孔aを穿ち、主体2の下側から外側にパツキングbを嵌めた調節ネジcを挿入して端部を受縁2aの雌ネジに螺入し、その先端を受縁2aの上方に突出させるとともに、受縁2aと調節ネジcとの螺合部分にガス通過間隙iを設けること。

(2) 受縁2aの上方に座金dを緩く嵌めて、その周囲にガスの通過間隙eを設け、座金dの上には多孔性濾過材fを載せ、その上にガス通過用の小孔5を有する弾性調節座4を密嵌すること

(3) 弾性調節座4の上に、周囲にパツキングgを嵌めた筒状の中介座15aを挿入して中介座の下端の筒状縁15bで弾性調節座4の小孔5の周囲を押え、中介座15aのガス通過孔16の上端部には周囲に円錐形の嘴端15cを形成し、主体2の上方から螺入する調節円筒体3で中介座の鍔縁15dを押圧することにある。(編注、以上は当事者間に争いがない)(中略)

【判決理由】二、そこで、まず、本件実用新案の構造上の特徴と債務者の製品の構造上の特徴とを比較すると、債権者は三点にわけて主張しているので、以下この順序にしたがつて順次検討する。

(1) 債務者の製品(以下「乙」という。)に上部を開口した主体2のある点は、本件実用新案(以下「甲」という。)と全く同一である。ただ乙の主体の形状が長筒状であるのに、甲のそれは函状と規定されているが、函状の形体についてはなんら限定が加えられていないから、長筒状もまた函状に含まれると解して差支えないであろう。次に中にいわゆる底板2'についてみると、乙において燃料匣1'及び透孔aの存在と対比して考察するとき、受縁2aがまさにこれに該当するものと考えられる。そして、乙においては燃料匣1'内の燃料は主体2の透孔aから進入し、調節ネジCと受縁2aの螺合部分の間隙iを経て座金dの周囲の間隙eを通過し弾性調節座4の小孔5に至る仕組になつているから、前記i及びeの部分が甲のガス噴出孔6に該当することが明らかであつて、これらの部分が甲の底板2'に該当する乙の受縁2aの中心にあることは、いうまでもない。してみると、乙は以上の諸点においてすべて甲の要件を具備しているといわなければならない。

債権者においてはこのほかに調節ネジ  を設け、そのねじこみによつてガスを調節できる仕組になつていると主張するけれども、この調節は調節用筒体による調節作用と関連がなく、別個に作動することは債務者の主張自体に徴して明らかであるから、単なる附加的構造に過ぎず、甲乙両者の対比には関係のないものといわなければならない。

また、債務者は、実用新案出願公告番号昭三七-ニ三四五四号、同昭三七-ニ三四五五号及び同昭三八-五八七号各実用新案を理由として、本件実用新案の主体の形状は、登録請求の範囲に記載された具体的構造に限定される旨主張し、成立に争いのない乙第五号証及び証人(省略)の証言中には、この主張に沿う部分もあるが、前記各実用新案が本件実用新案の後顧であることは成立に争のない甲第一号証、乙第二号証から第五号証までによつて明らかであるから、これをもつて本件実用新案の技術的範囲を限定することは許されず、したがつて債務者の主張は理由がない。

(2) 乙がガス通過用の小孔5を有する弾性調節座4を有すること、それが主体2の受縁2a上に嵌められていることからみると、受縁2aが甲の底板2'に該当することは、さきに認定したとおりである以上、乙はこれらの点においてすべて甲の構造上の特徴を備えているものといわなければならない。

債務者はこの部分について乙は多孔性濾過材f及び座金dを備えこれによつても調節作用を営ませていると主張するけれども、これらの部品による調節が調節用筒体による調節作用と無関係で別個に作動することは、債務者の主張によつて明らかであるから、附加的構造に過ぎないことは、さきに調節ネジCについて述べたと同様である。

(3) 乙がガス通過孔16を有する筒状の中介座15aを有し、これを弾性調節座4の上に重ねていること、主体2の上口端に調節用筒体3を螺入していること、調節用筒体の下端をもつて中介座の鍔縁15dを押圧していることの諸点において、甲の基本的構造と一致しており、ただ中介座と甲の押圧座板との異同が問題となるのみである。ところで、中介座15aは、その筒状縁15b嘴端15c鍔縁15dと一体をなしており、調節用筒体の押圧力を弾性調節座に伝える作用をすることは、その構造自体から明らかである。従つて、この中介座は特殊な形状をしているけれども、甲の押圧座板の変形したものに外ならないと考えられる。そして、甲の押圧座板の形状に関しては、前記登録請求の範囲の記載になんらの制限がないから、中介座15aは、その部分である15b、15c、15dとともに甲の押圧座板に該当するものといわなければならない。従つて、乙はこれらの諸点においても甲の要件を具備するものである。

(4) 従つて、以上のとおり乙は甲の構造上の特徴をすべて具備するものということができる。

三、次に、甲の作用効果上の特徴と、乙のそれとを比較すると、両者とも調節用筒体を回すことによりその下端をもつて押圧座板ないし筒状中介座を押圧したり元に戻したりして、それによつて弾性調節座に対する圧力を増減し、弾性調節座の小孔を広狭二様に変化させ、ガスの通過量を調節する作用効果を有する点においては、全く一致している。

債務者は乙はこのほかに多孔性濾過材f及び調節ネジCによつて更に調節、気化の作用効果を営ませていると主張しているけれども、これらの部材が附加的構造であることはさきに述べたとおりであるから、甲乙の作用効果の対比には関係がないわけである。

なお、債務者は、中介座15aによる押圧の度合が本件実用新案に比較して精緻である旨主張するが、これを認めるなんらの証拠もないばかりか、たとえ、精緻であつたとしても、本件実用新案の作用効果の本質に影響を与えるものではない。

四、以上のとおり、債務者の製品は本件実用新案の構造上の特徴をすべて具備し、その作用効果上の特徴も本件実用新案のそれと同一であるから、本件実用新案の技術的範囲に属するものといわなければならない。

してみれば、債務者がその製品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、譲渡又は貸し渡しのために展示することにより、債権者の本件実用新案権を侵害していることが明らかである。 (古関敏正 小酒礼 荒木恒平は転補のため署名押印することができない)

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