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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)12373号 判決 1967年3月23日

原告(反訴被告) 岩月正治郎

右訴訟代理人弁護士 佐川浩

被告 株式会社東京相互銀行

右訴訟代理人弁護士 林徹

被告(反訴原告) 結城三郎

右訴訟代理人弁護士 鬼倉典正

主文

一、原告の請求は、いずれもこれを棄却する。

二、原告は、被告結城三郎に対し、金四、四三五、〇八三円ならびに右うち金三、二九九、〇〇〇円に対する昭和三九年三月一七日より、うち金一、一三六、〇八三円に対する昭和四〇年四月一六日より支払ずみに至るまで各年五分の割合による金員を支払え。

三、原告と被告結城三郎との間において、被告結城三郎が前項記載の金員支払額の範囲内において別紙第一目録記載の建物(一)および(二)につき、別紙第二目録記載の根抵当権および別紙第三目録記載の停止条件付所有権移転請求権を有することを確認する。

四、被告結城三郎のその余の反訴請求は、これを棄却する。

五、訴訟費用は、本訴反訴を通じ原告の負担とする。

六、この判決は、第二項に限り、被告結城三郎が金一、四〇〇、〇〇〇円の担保をたてたときは、仮に執行することができる。

事実

<全部省略>

理由

一、本件建物(一)、(二)が原告の所有に属するところ、右建物二棟につき、原告主張の各登記のなされていることは当事者間に争いがない。

二、原告は、まず、本件建物につき、被告相互銀行関係各登記の登記原因となっている原告と被告相互銀行間になされた根抵当権設定契約及び停止条件付代物弁済契約は、いずれも原告の真意によるものではなく、同被告もこれを承知の上でなされたものである旨主張し、原告本人も右趣旨に副うよう供述しているが、右供述は、後記各証拠と比べて信用できず、その他右事実を認めるに足りる何らの証拠もなく、却って、<省略>左の事実を認めるのに十分である。

原告は、昭和三五年七月頃東京都中央区銀屋所在ニューギンザビル内の一部を他より賃借して飲食店を経営していた水上進より更にその一部を転借し、同様に飲食店を営むに至って同人と知り合うようになったものであるが、水上より同人がその営業資金として被告相互銀行から融資を受けるにつきその保証人になってもらい度い旨懇請されてこれを承諾した結果、その後同年九月二四日水上が被告相互銀行より、金一、〇〇〇万円を、弁済期同年一一月二二日(右弁済期は、後日昭和三六年一二月一日に延期された)期限後の損害金を日歩金五銭と定めて借り受けるに際し、被告相互銀行に対し被告結城と共同して水上のため右債務を連帯して保証するとともに、本件建物につき、債権極度額金を金九〇〇万円とする根抵当権設定契約並びに右債務の不履行を条件とする停止条件付代物弁済契約を締結し、右各契約に基づきそれぞれ上記各登記手続がなされるに至ったものである(被告結城もまたその所有の宅地、建物について右同様の契約を結び、かつ、登記手続を経由した)。

右認定の事実によれば、原告は、被告相互銀行に対し水上の前記債務を担保するため本件建物につき、真実根抵当権を設定し、かつ、債務不履行を条件とする停止条件付代物弁済契約を結び、右契約に基き、上記各登記がなされることになったものであるから、被告相互銀行に対し右各登記がその実体関係に符合せず無効であるとしてその抹消を求める原告の本訴請求は理由がない。

三、<省略>水上は、上記債務の一部を弁済期に弁済したのみで、残金を弁済しなかったため、被告相互銀行は、昭和三七年三月頃被告結城所有の前記宅地・建物に対し根抵当権実行のため任意競売の申立をしたが、被告結城は、これに対し台東簡易裁判所に対し民事調停の申立をした結果、昭和三八年八月二八日同裁判所において、被告結城は、被告相互銀行に対し、水上進の連帯保証人として、未払残元金六、五九八、〇〇〇円及びこれに対する昭和三六年一二月二日より昭和三八年八月二八日まで約定による日歩金五銭の割合による損害金二、〇九六、三六五円、翌同月二九日より完済に至るまで前同様の割合による損害金並びに競売費用金六五、七九五円の債務あることを認め、これを同月末日より昭和三九年三月末日までに割賦弁済すること、被告結城が約定に従い遅滞なく右債務を履行したときは、被告相互銀行は、前記日歩金五銭の割合による損害金を日歩金四銭に減額する旨の調停が成立した。かくて、被告結城は、被告相互銀行に対し右調停条項のとおり滞りなく昭和三九年三月一六日までに右合計金八、八七〇、一六六円全額(損害金額は、右約定により日歩金四銭の割合で計算)の支払を完了したものである。しかして、右認定に反する証拠はない。

四、以上認定のように、被告結城は、水上のためその残債務全額を弁済し、同人の他の連帯保証人たる原告のためにも共同の免責を得たものであるところ、被告結城と原告との間には、水上の連帯保証人としてその負担部分の割合につき特別の約定のあったことは認められないから、その負担部分は、平等の割合というべきであり、従って、被告結城は、原告に対し共同の免責を得た額の二分の一について求償権を取得するに至ったものといわねばならない。しかして、被告相互銀行が前記任意競売申立に要した費用金六五、七九五円は、民法第四六五条の準用する同法第四四二条第二項所定の避けることを得なかった費用に当るものと解せられるので、結局、被告結城は、原告に対し上記金八、八七〇、一六六円の二分の一たる金四、四三五、〇八三円及び右金員より競売費用の半額金三二、八九七円(銭以下切捨)を差引いた残金四、四〇二、一八六円に対する共同免責のあった前記昭和三九年三月一六日以後支払ずみに至るまで民法所定年五分の割合による法定利息金並びに右金三二、八九七円に対する翌同月一七日より支払ずみに至るまで同率の割合による遅延損害金の支払を求める範囲内において求償し得ることは明かである。

五、以上のとおり、被告結城は、原告に対し前認定の如く求償権を取得したのであるから、右求償権の範囲内において被告相互銀行に代位し、同銀行が債権の効力及び担保として原告に対して有する一切の権利を取得しこれを行使し得るものであり、従って、被告結城は、被告相互銀行が原告に対し有していた上記根抵当権はもとより、停止条件付代物弁済契約上の権利も抵当権と同じく債権者が債権弁済確保のため債権の担保として有する権利と解するのを相当とするので、右契約による所有権移転請求権も取得したものというべきである。従って、被告結城に対しても、同被告関係の各付記登記がいずれもその登記原因を欠くものとしてその抹消を求める原告の本訴請求は、その余の判断をするまでもなく理由がない。

六、被告結城の反訴請求について<以下省略>。

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