東京地方裁判所 昭和39年(ワ)12636号 判決
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〔判決理由〕被告吉田初江の責任の有無について検討するに、既に認定したところによれば、原告ら主張の不法行為として問責すべき同被告直接の所為は本件において存しないという外ない。
さらに上来認定の事実と前掲甲第三号証及び同第八号証並びに被告吉田留治朗および原告両名本人尋問の結果によれば被告留治朗は昭和三三、四年年頃から不動産仲介業を営んでいるが、他に職業をもつている関係で便宜上その登録の関係は妻である被告初江の名義としているものに過ぎず、実際には被告留治朗が営業主の地位にあり、もとより被告初江において被告留治朗を指揮監督すべき関係にもなく、また右の登録の点以外に一般取引上被告初江が営業主である旨表示されているような事実もなく、現に原告両名においても被告初江が営業主であると考えたようなことはなく同被告が本件取引に何らかの形で関係をもつているようなことは思いも及ばなかつたことが明らかである。結局本件において、被告初江は留治朗と夫婦関係にあり、その営業の登録名義人とされていること以外にその事実上の特段の関係は証明されていない。従つて本件に顕われた限りの事実関係によれば、被告初江に対し仲介契約上の責任を問うべき根拠はなく、また前述の被告初江名義の登録のあることから被告留治朗の所為に基いて民法第七一五条により被告初江の責任を問うこともできないと考える」。
「次に原告らは、本件建物の値上りを理由にその買受価格と本訴提起当時における建物の価格との差額を損害として主張するけれども、不法行為による財産上の損害の賠償は不法行為がなかつたと同様の財産状態を回復することとを期するものであり、本件においてはもし被告らの不法行為がなかつたら原告らは本件のような売買をしなかつたであろうとして、かような売買をしたことによる損害の賠償を求めることはできるけれども、買受建物を原告らが保有すべきことを前提として所論のような得べかりし利益の喪失をもつてその損害とし、これが賠償を求めることはできないものというべく、この部分に関する原告らの請求は失当である。 (安国満彦)