大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和39年(ワ)2043号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕被告は警視庁巡査であるが、昭和三八年一二月二四日その職務として大井警察署から東京地方検察庁へ護送車の運転に従事中、港区芝田村町四丁目一三番地路上で急停車したため、護送車に同乗中の原告はその衡激をうけて車内仕切綱に激突し左側頭部打撲症の傷害をうけ現在なお後遺症に苦んでいる。右事故は被告が左右注視を怠つたために惹起された過失によるものであるから被告にたいし金二〇万円の慰藉料を支払うべきことを求める。

被告は、本件は被告が警視庁巡査として護送車の運転に従事中同人の過失により原告に加えられたとする損害の賠償を求めるものであるが、かかる場合は国家賠償法第一条により国又は公共団体のみが賠償責任を負い、当該公務員に対しては請求できないものと解すべきである、と抗争した。

判決は被告の主張を容れつぎのとおり判示している。

〔判決理由〕しかして警視庁巡査による護送車の運転は国家賠償法第一条にいわゆる公権力の行使にあたるものと解するのが相当であるから、原告の受傷は警視庁巡査である被告が東京都の公権力の行使としてその職務を行なうにあたつて加えられたものというべく、かかる場合に被告に過失があるとしても、前記法条に照らし、その賠償の責に任ずるのは東京都のみであつて、被告個人は損害賠償の責を負うものではないと解すべきである(最高裁昭和三〇年四月一九日三小判民集九巻五号五三四頁参照)。してみれば被告に対し同人の公権力の行使としての職務上の過失を理由に慰藉料の支払を求める原告の本訴請求は、その他の点の判断をするまでもなく失当として棄却すべきものである。(鈴木潔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!