大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)2972号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕抵当権者が抵当権に基き目的物件の不法占有者に対して、目的物件からの退去を求めることができるかどうかについて検討する。

抵当権はその設定者が占有を移さずに債権の担保に供した不動産につき他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける一つの価値権であつて、抵当不動産の使用収益は勿論その占有をなす権利をも包含しないものである。従つて、目的物を何人が占有するかは抵当権に何らの影響を与える事柄ではなく、仮りに何人かが無権原に目的物を占有しその使用収益をなしたとしても、これによつて目的物そのものを損壊するなどして目的物の価値を減少しない限り、抵当権は何ら侵害を受けることなく、抵当権者はこれに干渉し得ないものといわなければならない。

原告は、無権原者が貸借人と積して目的物を占有している場合には、目的物の競売価格が著しく低下し、債務の弁済を完全にうけることができなくなるから、抵当権は侵害されていることになると主張するけれども、抵当権者に対抗する権原のない目的物の占有者は、当然競落人にも対抗できず、競落人はこれに対して明渡を求めることができるのであるから、競売に際しては無権原者の占有は法律上無視すべきものであつて、これにより競売価格が左右されることは法の予想しないところである。なるほど、現在の訴訟の実情をみると、競落人が不法占有者を退去させるために相当の年月と費用を要したり又は和解によつて立退かせるにしても相当額の立退料の支払を要したりする場合があることは否定できないけれども、これはあくまで事実上のことであり、また競落人がこれにより蒙つた損害の賠償を占有に求めえないわけではないのであつて、これにより抵当権が侵害されたということはできない。このことは民法第三九五条が抵当権者に損害を及ぼす短期賃貸借についても抵当権者に訴の方法により右賃貸借契約の解除を請求する権利を与えたに止まり、抵当物件の明渡しや損害賠償について何等規定していないことからもうかがうことができる。(岡松行雄 石崎政男 今井功)

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