東京地方裁判所 昭和39年(ワ)4967号・昭37年(ワ)5478号 判決
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〔判決要旨〕未成年者のした取消しうべき行為の取消権の消滅時効期間の起算点は、取消権の承継が介在し、あるいはその承継人が取消しうべき行為の在在を認識しなかつたとしても、未成年者が成年に達した時である。
〔争点〕本件土地はもと市原政治の所有であつたが、昭和一七年四月一日および昭和一八年三月二九日に未成年の子政弘が自己の所有として被告に売渡した。政治は昭和一九年一月五日死亡して、政弘が家督相続をしたが、政弘も昭和二〇年四月二〇日死亡して、原告が家督相続をした。原告は、政弘のした本件土地売買は未成年者のした無権代理行為であつて、いずれにせよ無効であるから、原告は本件土地所有権を承継取得しているとして、本件土地の所有権確認とその引渡しとを求めたが、被告は、政弘が成年に達したのは昭和一八年五月一二日であり、原告が政弘のした売買契約取消の意思表示をしたのは昭和三九年三月三日の口頭弁論期日であつたから、取消権の行使につき五年の時効期間はもとより、行為の時から二〇年の除斥期間を経過した後であり、右取消の意思表示は効力がない旨抗弁した。これに対し原告は、政弘は本件売買成立直後に入隊して、家督相続当時兵役にあり、そのまま除隊することなく昭和二〇年四月二〇日ルソン島で戦死したので、同人としては取消権を行使するに由なかつたのであり、他方原告としては、昭和一九年一〇月頃満州から引揚げて来て帰郷後政弘と生活を共にした事実もなく、わずか一、二回政弘と面会しただけで、本件土地の売買については全く知らされることなく、原告がこれを知つたのは、被告が代位登記手続により本件土地を原告名義に移転登記した昭和三三年八月二一日以後のことで、取消の意思表示前五年以内である、本件についてはこのような特別の事情があるので、五年の時効期間は原告が売買契約の事実を知つた時から起算すべきである、と主張した。
判決は、次のように説いて原告の右主張を斥けている。
〔判決理由〕未成年者の行為は、追認をなしうる時すなわち未成年者が成年に達した時(本件においては、昭和一八年五月一二日成年に達したことは当事者間に争いがない)から五年内に取消権を行使しなければならず、この期間の起算点は、その間に取消権の承継が介在し、あるいはその承継人が取消しうべき法律行為の存在を認識しなかつたとしても、未成年者が成年に達した時からであることは変わりがないものと解すべきであつて、仮に、原告主張のような事情が存したとしても、未成年者の承継人である原告が未成年者の行為を了知した時から五年間は取消権を行使できるとする原告の見解を採用すべき根拠とはならない。(田嶋重徳 田中良二 矢崎秀一)