東京地方裁判所 昭和39年(ワ)5328号・昭39年(ワ)6696号 判決
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〔争点〕龍野醇三は昭和三七年一月一三日金額三五万円、満期昭和三七年二月二八日、支払地、振出地東京都豊島区、支払場所巣鴨信用金庫大塚支店、受取人関東食品興業株式会社と記載した約束手形を振出し、被告中村善明は昭和三七年一月一八日関東食品興業株式会社代表取締役中村善明名義で右手形に裏書をなし拒絶証書作成義務を免除した上、被裏書人白地で訴外望月俊夫に譲渡し、同人は原告に引渡によりこれを譲渡し、ついで原告は訴外三弘電気株式会社に、同会社は訴外静岡三洋販売株式会社に、同会社は訴外株式会社住友銀行に順次裏書譲渡し、同銀行は右手形を満期に支払場所で支払いのため呈示したが、支払を拒絶されたので、原告はその後これを受戻し、その後の裏書を抹消し現にこれを所持している。関東食品興業株式会社は実在するものでなく、結局関東食品興業株式会社代表取締役なる裏書は被告中村の肩書名にすぎないから、原告は被告中村にたいし右手形金と満期以後支払いずみにいたるまで手形法所定の年六分の割合による利息の支払いを求める。
被告中村は裏書の事実を否認した。
判決は証拠によつて被告中村は本件約束手形の第一裏書人として関東食品興業株式会社代表取締役中村善明なる記名印並にその名下に代表者印を押して白地裏書をなし、その後本件手形は原告主張のように裏書され転々したが、満期に呈示したところ支払拒絶されたのでその後原告が所持人となつたこと、右手形の第一裏書人らんに表示されている関東食品興業株式会社なる商号の会社は実在しないものであること、本件手形の授受の当時原告ら手形取得者はいずれも右会社が実在しないものであることを知らなかつた事実を認定した上、手形法第八条前段の規定の準用により無権代理人と同様の責任を負うべきものと判断し、原告の請求を認容したが、右の点につき次のとおり説明している。
〔判決理由〕被告中村は実在しない関東食品興業株式会社の代表取締役の資格で本件約束手形に裏書をしたのであつて、右関東食品興業株式会社代表取締役なる裏書名義が、単に被告中村の肩書に過ぎず、右手形の裏書人は被告中村個人であると認めることはできない。しかしながら、かように実在しない会社の代表取締役として現実に裏書行為をしたものは、手形法第七七条第二項第八条前後の規定の準用により、無権代理人の責任と同様の責任を負担すべきものと解するのが相当である(大阪地方裁判所昭和二七年七月二日判決、下級裁判所民事裁判例集三巻九三〇頁参照)。従つて、被告中村は前記手形法第八条の準用により本件約束手形の裏書人としての責任を負担するものというべきである。(藤野博雄)