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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)7504号 判決 1965年4月24日

原告 財団法人学校福祉協会

右代表者理事 高木義顕

右訴訟代理人弁護士 西園寺正雄

同 若菜允子

被告 水谷源助

右訴訟代理人弁護士 本渡乾夫

同 桜井公望

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

本件について、当裁判所が昭和三九年八月一一日になした強制執行停止決定を取消す。

前項にかぎり仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が、被告と訴外高木年太郎間の渋谷簡易裁判所昭和三七年(ハ)第五二二号建物収去土地明渡請求事件の判決に基いて別紙物件目録記載の土地、建物(以下、本件土地、建物という)に対してなす強制執行はこれを許さない。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求の原因として、

一、被告と訴外高木年太郎間の渋谷簡易裁判所昭和三七年(ハ)第五二二号建物収去土地明渡請求事件につき、同庁において同三九年三月三〇日「被告(高木)は原告(本件における被告)に対し、別紙物件目録記載の建物(本件建物)を収去し、同目録並に図面記載の土地(本件土地)を明渡せ。訴訟費用は被告の負担とする。この判決は金一万円の担保を供するときは仮に執行することができる。」との判決が言渡されたので、高木は右判決に対して控訴をなし、その結果、東京地方裁判所同年(レ)第一五四号事件として係属して、同庁で同年八月五日「本件控訴を棄却する。訴訟費用は控訴人(高木)の負担とする。」旨の判決がなされた。

二、そこで、被告は、右第一審判決に基いて本件土地、建物に対して強制執行をすべく、現在準備中である。

三、しかしながら、原告は高木から昭和三四年一月一日本件建物を賃料一月三万円の約で賃借し、同日本件建物の引渡を受けて、爾来原告において、その敷地である本件土地とともにこれを占有使用している。

四、よって、原告はいずれも占有権に基いて、被告が本件土地、建物についてなす強制執行の排除を求める。

と述べ、被告の本案前の主張事実を否認した。

被告訴訟代理人は、本案前の弁論として、主文第一項同旨の判決を求め、その理由として、

原告は、未だ本件土地、建物の強制執行に着手していないから、第三者異議の訴を起す利益を欠いている。

と述べ、本案につき、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め答弁として、

請求原因第一項の事実は認めるが、同第二項の事実は否認、同第三項の事実は知らない。

と述べた。

証拠≪省略≫

理由

一、まず、本案前の抗弁について。

請求原因第一項の事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実に成立に争いのない乙第一号証の記載を結合すれば、被告と高木年太郎間の建物収去土地明渡請求事件は、その控訴審判決に対して高木が上告し、現在東京高等裁判所に係属中であること、そして被告は債務名義である第一審判決につき未だ執行文の付与を受けていないことが認められる。

ところで、第三者異議の訴は、強制執行の目的物件について所有権その他の権利を有する第三者が、執行行為によって自己の権利行使に対する侵害が現実化したとき、執行債権者に右目的物が債務者の責任財産に属していないことを主張して、右執行行為の排除を求めるために許されるものであるから、特定の土地、建物の明渡に関する強制執行にあっても、既に目的物件が一定しているとは云え、末だ執行債権者において執行力ある正本の付与を得ていない段階にあっては、原則として、右訴は、対象を欠くものとして、訴の利益を有しないと解するのが相当である。

そうすると、前認定のような経緯にあり、他に、特に執行文の付与以前において権利行使の妨げられる危険が目前に迫り、既に第三者異議の訴を提起しなければ逸機のおそれがあると云うような格別の事情の存在も窺われない本件にあっては、原告は末だ本件土地、建物に対して強制執行の排除を求める利益を有せず従って、原告の本件訴はその余の争点について判断するまでもなく、その利益を欠く不適法なものとして排斥を免れない。

二、よって、本件訴はこれを却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、強制執行停止決定の取消について同法第五四八条第一項第二項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中田四郎)

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