大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)771号・昭39年(ワ)2232号・昭36年(ワ)9928号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕進んで、ビルマ連邦がビルマ国の右土地に対する所有権を承継したか否かについて検討する。

……によれば、ビルマは一八八六年英国に併合され、英領インドの一州として統治されていたところ、一九三七年四月一日インドから分離されてビルマ統治法により直接イギリス本国の統治するところとなつたが、第二次世界大戦中の一九四二年(昭和一七年)八月一日ビルマに樹立されたバー・モウ政府は翌年八月一日にビルマ国の独立を宣言し、これと同時に我国はこれを承認したこと、第二次世界大戦の終了後一九四七年(昭和二二年)九月二四日にビルマ仮政府が樹立され、翌年一月四日英緬条約の発効によつてビルマ連邦が成立し、同国と我国との間には一九五四年(昭和二九年)一一月五日平和条約が調印されたが、その発効に先立ち同年一二月一日両国において互に臨時代理大使を任命したことにより、我国は同日を以て同国を黙示的に承認したことが認められる。ところで、……によりと、次のとおり認められる。すなわち、第二次世界大戦中日本軍のビルマ占領に伴なつて成立したビルマ国政府は、イギリス本国との関係では分離独立を目的とした国内の一つの反乱団体又は法的根拠をもたない地方的な事実上の政府であつたところ、一九四五(昭和二〇年)九月二日、日本の連合国に対する降伏と共に壊滅し、いわゆる鎮圧された革命団体又は不成功に終わつた革命(反乱)政府となつた。かように敵対政府を樹立するまでに至つた革命が鎮圧され又は不成功に終つた場合における鎮圧された政府の財産についての権利の相続又は承継に関しては、当該財産が反乱のおこなわれた本国の領域内にある限り国際法上何らの問題を生じない。しかし、当該財産が外国にある場合には、従来本国に属していて反乱政府が押収したものと、反乱政府が自発的な合意の結果として、或いは捕獲物の適法な押収の結果として、ないしはその他の方法により取得したものとに区別して、本国政府が、前者の財産については外国の裁判所において優越する権限により、後者の財産については敵対政府の承継者としての権利によつて、これを回復しうべきものである。

従つて、本件不動産のように、反乱政府であり事実上の地方的政府であるビルマ国政府が、これを承認した我が国において自ら適法に取得した財産(この点は、前記三において判示したところに照して明白である)が後者の財産に属することは明らかであり、これについては、イギリス本国がビルマ国政府の承継者としての地位においてこれを回復しうることになつたのである。そして、ビルマ連邦は一九四八年(昭和二三年)一月四日イギリス本国から新国家の分離として正式に独立を遂げたものであるから、ビルマ連邦のために、本件不動産につき当然国際法上イギリス本国からの権利の承継が行われるべきものである。すなわち、イギリス本国とビルマ仮政府の間に一九四七年(昭和二二年)一〇月一七日締結された条約においては、条約で定める以外の権利義務の承継に関しては一切を国際慣行又は慣習に委ねていることが明らかであるところ、国際法の一般原則上、国家領域の一部が分離して国家となりそれ自身一つの国際法上の人格となつたときには、譲渡又は分離にかかる部分の領域と地域的に関連のある既存国家(被相続国家)の国際的な権利義務及び右の領域の部分に存在する国有財産について相続が行なわれることとされている。従つて、本件不動産のようにその取得資産の出所、取得の経緯、使用の目的(その詳細は前記三において認定したところである)からみて、ビルマと地域的に関連をもつ財産であることの明らかなものについては、ビルマ国政府からこれを承継し回復する権利を取得したイギリス本国より更にビルマ連邦がこれに対する承継回復の権利を国際法上適法に取得し、かつこれを行使しう地位に立つものというべきである。そして、我が国としては、ビルマ連邦を新しい独立国家として承認し、かつビルマ連邦政府とも平和条約を締結してこれを承認したものである以上、その効果として、前政府が鎮圧された当時これに属していた財産で新政府を承認した我国の管轄内にあるものについて、新政府が所有権を主張し占有を承継する権利を有することを認めなければないない。加えて、連合国が我国を占領中、傀儡政府(ビルマ国もその中に含まれていた)。在日財産に関して一九五一年(昭和二六年)一二月一〇日付で日本国政府宛に発した連合国最高司令官の覚書(SCAPIN二一八八)においては、傀儡政府の財産で日本に所在するものの所有権を決定するために、日本国政府は相互に合意される時期に、それと個別的な交渉を始めなければないないものと定められていたところ、日本国政府は、これに従つてビルマ連邦政府をビルマ国政府の正式承継者として在日ビルマ財産の返還に関する規定(第六条)を含む平和条約を締結したのであり、更にまた、ビルマ国政府の消滅と我が国が平和条約を締結して承認したビルマ連邦政府の成立との中間の時期においてビルマ国が第二次大戦中我が国が適法に所有権を取得した財産の管理につき、我が国とイギリス本国との間に公けの交渉があり、当該財産が終局的にはビルマ連邦政府に返還されるべきものであることが予定されていた(一九五二年((昭和二七年))四月二日付在日イギリス連絡使節団の賠償庁宛書簡及び同年七月九日付外務省のイギリス宛口上書参照)のであるが、これらの事情は、我が国の裁判所においても考慮すべき事項である。

以上判示したところに照すと、ビルマ国が前示経緯によつて取得した本件不動産に対する所有権は、ビルマ国から一旦イギリス本国に承継された後、更にイギリス本国よりビルマ連邦に承継されるに至つたものといわなければならない。これと異なる趣旨の成立に争いがない甲第二二号証(大平善梧作成にかかる鑑定書)及び北沢証言中の見解は採用できない。(石田実 宮崎啓一 松井賢徳)

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