大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(モ)960号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

債権者の申請の理由

一、スイス法人ソシエテ・デ・プロデユイ・ネツスル・エス・アーは、次の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する。

登録番号 第三二四二四三号

出  願 昭和一三年九月二三日

登  録 昭和一四年一一月一七日

更新登録 昭和三四年一二月二二日

指定商品 旧第四四類 珈琲、珈琲エキスその他本類に属する商品

登録商標 別紙第一目録記載のとおり

二、債権者は、本件商標権につき、設定の登録により次の専用使用権(以下「本件専用使用権」という。)を有する。

設定登録 昭和三九年一一月二日

範  囲 全部 但し、輸入商品に限る。

期  間 昭和四〇年一二月三一日まで

三、債務者は、諸種輸入製品を販売することを業とするものであるが、容器に貼付されたラベル及び外箱に別紙第二目録記載の商標を附した瓶入りインスタントコーヒー一ケース一二本入り九ケースを、本件仮処分命令申請事件の相債務者東邦倉庫株式会社に寄託して、所持している。

四、別紙第二目録記載の商標は、その称呼、外観及び観念のいずれの点からみても、本件登録商標と類似している。

なお、瓶入りインスタントコーヒーが、本件商標権の指定商品に含まれることも、明らかである。(以下省略)

【判決理由】一、申請の理由第一項から第四項まで及び第七項の事実は、当事者間に争いがない。

二、本件の主要な争点は、債務者が本件瓶入りインスタントコーヒーを販売のために所持しているのか、それとも自己消費のため所持しているのかという点にあるから、この点につき検討する。

(一) 証人(省略)の各証言及び債務者本人尋問の結果並びに本件口頭弁論の全趣旨を考えあわせると、債務者は、昭和三一年以前から肩書地のいわゆるアメヤ横町に約一坪の事務所風の店舗を構えて輸入食料品等の卸販売業を営み、その取扱商品の中にはネスカフエ瓶入りインスタントコーヒーも含まれていたこと、その営業形態は、店舗が狭く、かつ事務所風の造作のため、店舗内には取扱商品の見本を置く程度にとどめ、取扱商品の殆どは東邦倉庫株式会社の倉庫に保管料を支払つて一時寄託し、取引の成立とともに同倉庫から商品を搬出するという方法によつていたことを一応認めることができる。

(二) 以上の事実に、前記争いのない事実をあわせ考えると、本件瓶入りインスタントコーヒーの数量が一ケース一二本入り九ケースとかなりまとまつた量であつて普通消費用の量というよりはむしろ販売用の単位であり、しかも債務者は、従前より同種の瓶入りインスタントコーヒーを取扱つてその流通経路を知つていることからみて、債務者はその通常の営業形態どおりにこの商品を前記倉庫に寄託したものであり、販売のため所持しているものと推認するのが相当である。

(三) 債務者は前記商品は、債務者の経営する純喫茶店「ブン」で消費する目的で購入したものの残部であつて、これも同喫茶店で消費するために所持している旨主張し、前掲(省略)の証言及び債務者本人の供述中にはこの主張に沿う部分がある。しかしながら、債務者は、三関栄一が純喫茶店「ブン」を経営するに際してその敷金二〇〇万円を支出したのみで、その後の経営には一切関係せず、同喫茶店が対外的にも債務者名義となつていないことは、成立に争いのない甲第六号証、同第七号証の一、二及び債務者本人の供述によつて明らかであるから、債務者がその共同経営者といえるかどうかは極めて疑わしい。また、証人(省略)の証言によれば、瓶入りインスタントコーヒーの消費者は普通一般家庭であつて、喫茶店等コーヒーの味を売物としている所では通常これを使用しないことがうかがわれる。のみならず、債務者が、本件瓶入りインスタントコーヒーを喫茶店に使用するのであれば、たとえ喫茶店「ブン」がいかに狭かろうとも、この程度の商品を保管する場所が全然ないということは通常考えられない。以上の諸点からみて、証人(省略)債務者本人の前記各供述部分はにわかに信用することができず、他に、前記推認を左右するに足りる的確な疏明はない。

三 してみれば、債務者が容器に貼付されたラベル及び外箱に別紙第二目録記載の商標を附した瓶入りインスタントコーヒー一ケース一二本入り九ケースを販売のためすなわち譲渡又は引渡のために所持することにより、債権者の本件専用使用権を侵害していることは明らかであつて、本件仮処分の必要性は、前に認定したとおり債務者が食料品等の卸商であつて、本件瓶人りインスタントコーヒーをいつまでも他に処分しうる可能性を有していることから容易に観取することができる。(古関敏正 荒木恒平 野沢明)

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