大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)1475号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三、(被告会社の責任)

本件事故を惹起した被告車は被告会社が昭和三八年五月一四日訴外株式会社福田モーター商会から所有権留保付月賦販売契約によつて買受け、本件事故当時使用貸借契約により使用権を有していたものであることは当事者間に争いがないから、被告会社は被告車を自己のために運行の用に供する者の地位に立つものというべきである。もつとも<証拠>によると、本件事故は被告会社の休日に被告武が家族を伴つて都内江東区亀井戸に居住する父のもとに遊びに行つた帰途の事故で、かねてから長兄で被告会社を事実上経営していた被告一富から休日に車を使用しないよう注意されていたことは認められるが、<証拠>によると、被告会社は事実上被告一富、その弟の訴外菊池豊および被告武の三人と事務員である訴外伊藤通子とで業務を運営し、被告武は日頃から被告車を運転して製品輸送の業務を担当していたことが認められるから、本件事故時の運行が前記のような経緯のもとになされたものであるとしても被告会社は依然として運行供用者の地位に立つものというべく、したがつて自動車損害賠償保障法第三条により本件事故により原告の蒙つた損害を賠償すべき責務があるものといわなければならない。

四、(被告とみ子、同一富の責任)

原告は、被告とみ子、同一富が本件事故当時被告会社に代つて事業を監督していたものであると主張するので、その点について判断するに<証拠>によると、被告一富、同とみ子は夫婦で、一富はもと訴外株式会社東京理化研究所を事実上経営し、マイクロホンの製造販売を行つていたが、同被告が同会社の大口の取引先であつた株式会社品川製作所との間でもめ事を起し取引を停止されたところから、同訴外会社の意向もあつて被告とみ子が代表取締役となつて被告会社を新たに設立したが、実際上の営業は被告一富が前記認定のように弟の訴外菊池豊らを使つて行い、被告とみ子は名目上の代表取締役で、日常専ら家事に従事していたにすぎないことが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

そうだとするならば、被告一富は被告会社に代つて事業を監督していたものということができるが、被告とみ子は被告会社に代つて事業を監督していたものということはできない。

もつとも前記各証拠特に被告菊池とみ子本人尋問の結果によれば、訴外株式会社品川製作所ともめ事が起きた際その解決のための折衝に当つたのは被告とみ子であるうえ、同女夫婦は被告会社事務所の二階に居住していることが認められ、その他被告会社の構成人員そして同女と被告武との親族関係等を併せ考えると、同被告も代理監督の地位に立つものとみる考え方も全く考慮の余地のないものとは言えないが、民法第七一五条第二項にいう代理監督は事実上事業を監督しているものと解すべきであるから、右の事実関係のみをもつてしてはいまだ同被告をもつて代理監督者とみることはできない。

したがつて、被告一富は民法第七一五条第二項により本件事故により原告が蒙つた損害を賠償すべき義務があるが、被告とみ子はその義務がなく、同被告に対する請求はその余の点を判断するまでもなく理由がないものというべきである。(小川昭二郎)

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