東京地方裁判所 昭和40年(ワ)1818号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕次に被告会社の利得の有無について考えてみるのに利得償還請求権が成立するについては手形債務者に利得が存しなければならないが、ここにいわゆる利得とは手形の授受によりその原因たる実質関係において受けた利益が手形債権の時効消滅にも拘わらず保持されることをいうべきところ、本件手形は工事代金の支払確保のために振り出されたものであるから、手形債務とともに原因債務たる工事代金債務も併存し、本件手形の振出そのものによつてはなんら利益を受けてはいないし、その後右原因債務が時効により消滅し、結果的に被告がその支払義務を免れたことによる消極的な利益を得たとしても、これは手形の授受とは無関係な時効という法定の原因に基くものであるから、利得償還請求権の対象たるべき利得というを得ない。
右に説示したところにより明らかなとおり、被告会社には償還すべき利得はないといわねばならないから原告の被告会社に対する請求はその余の点について判断を加えるまでもなく失当であること明らかである。(小林啓三)