大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)2746号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔説明〕原告が「被告車は被告の所有にかかるものであるから、被告は自己のために被告車を運行の用に供する者として自動車損害賠償保障法第三条によつてその運行によつて生じた損害を賠償しなければならない。」と主張したのに対し、被告は、「被告は、毎日午後五時終業後は、被告車を使用せず、これを被告の社員寮(江戸川区松本町六九二番地)の隣地の被告用地に施錠して格納し、その鍵は同寮長が、寮長不在時には副寮長がその居室に保管し、夜間被告車を使用する必要あるときはその都度右保管者の許可を得て鍵の交付を受ける旨の規則を定めて社員にこれを厳守させていた。事故当夜は寮長訴外青木恒夫が所用不在のため副寮長訴外大金照光が鍵を居室に保管していたところ同寮に居住する訴外臼木が午後七時ころ友人宅へ私用で遊びにゆくため、右大金の許可なくして秘かに右鍵を持出し被告車を運転して外出し、その帰途本件事故となつたのである。従つて訴外臼木の当該被告車の運行は被告の自動車支配力を排除して臼木のために行なわれたものであつて、被告のための運行ではない。」と抗争した事案であるが、被告の右主張は、判決の事実摘示において抗弁としてとり扱われており、自賠法三条の運行供用者の主張。立証責任いかんを考えるうえで、興味をいかれるところである。

〔判決理由〕被告の損害賠償責任の有無について判断する。

(一) 被告が被告車の所有者であつたことは当事者間に争いがなく、そうとすれば被告は被告車を、自己のために運行の用に供していた者であるということができる。もつとも<証拠>によると、本件事故を惹起した運転者の臼木は被告の従業員の寮に居住しているものであつて、当夜は午後九時半ころ、私用のための外出に普段自己が業務として運転している被告車を使用すべく、車の鍵の保管者である副寮長の大金照光に断わることなく、鍵を持ち出し、寮の構内に置いてあつた被告車に乗車運転して、友人宅に至り、その帰途事故を起したことが認められる。そうすると、本件事故当時の被告車の運行は主観的、具体的には訴外臼木のための運行であつたとしても、前認定のように臼木は被告の従業員であり、しかも普通被告車を運転することをその担任業務としていたものであり、かかる地位にあるものが、私用のため僅か一、二時間被告車を持出して運転することは、いまだ被告の有する一般的な被告車に対する運行の利益および支配を排除する程度の事実とは到底認め難く、被告はその間依然として被告車を自己のために運行の用に供するものとしての地位を失うことなく、これを持ち続けるものといわねばならない。

(二) よつて次に免責事由の一つである運転者たる訴外臼木に過失がないか否かにつき判断するに、<中略>訴外臼木正男について過失がなかつたとは到底認められない。

そうすると、その余の点について判断するまでもなく、被告は自動車損害賠償保障法第三条により、被告車の運行によつて生じた後記損害を賠償しなければならない。(吉岡進 岩井康倶 浅田潤一)

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