東京地方裁判所 昭和40年(ワ)4781号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕ところで、一般的に公訴提起前の人の犯罪容疑に関する事実を被告のような日刊新聞が報道することは、容疑事実としての犯罪行為に対する社会の批判と反省とを促がし、犯罪の一般予防にも寄与することになるので公共の利害に関するものとして、その報道がことさらに人の精神的ないし物的利益を害する目的でその目的に相応するような表現方法を用いたとか、或いは単に読者の覗き見的興味をそそることのみを目的としてこれに相応した表現方法を用いたものでなく、しかもその報道内容が真実に合致するものである限り、不法行為にはならないものというべきである。つまり、そうした報道によつて人の社会的評価を傷つけることになつても、これを報道した者はそのことに因る損害賠償責任を負わないものと解するのが相当である。
さらに、報道の真実性の要求に関しては、被告のような日刊新聞の場合には、その時々の社会の動きをとらえて迅速に報道することをその社会的使命としているのであるから、公訴提起前の刑事事件の報道についていえば取材の時点において把握した事実を、その正確性については報道機関として客観的にみて首肯できる程度に調査して報道したものである限り、不法行為上の責任を問われないものと解するのが相当である。(安藤覚 森川憲明 山口和男)