東京地方裁判所 昭和40年(ワ)7453号 判決
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〔判決理由〕株式会社の合併に際し、合併登記が行なわれる以前に存続を予定されている会社が、合併契約にもとづいて、将来存続会社の株主となる消滅すべき会社の株主に対して株券を発行した場合において、かゝるものを株券と認めうるかどうかについて判断する。
商法第二二六条第二項、第三項の趣旨よりすれば、株券の発行は、株式を創設するものではなく、株券は既に存在する株式を表彰するものであることは明らかである。したがつて、いまだ株主となつていない者に対して株券を発行しても、かゝる者が株主となるものでもなければ、またかゝる株券が株式を表彰するものでもないことはいうまでもない。
ところで、合併契約について、消滅会社の株主が、合併後、存続会社の株主となるものと定められている場合においては、右株主は、合併の効力が発生する合併登記後にはじめて存続会社の株主となるものと解すべきであり、したがつて、本件において、訴外南旺株式会社の株主が被告の株主となつた時期は、合併の登記がなされた時であるから、右合併登記前に、訴外南旺株式会社の株主に対して発行された被告名義の株券は、株主でない者に発行されたもので、表彰すべき株式がいまだ存在せず、結局株券とはいいえないものであるといわなければならない。
三、「そこで更に進んで、原告の仮定主張について判断する。被告とされたことは当事者間に争いがないので、右合併の登記が、前記のような事情のもとに発行された株券のもつ瑕疵を治癒するか否かについてみるに、前叙のとおり株券の発行があるといいうるためには、先ず、既に当該会社の株主となつているものに対してこれが発行されることが必要であると解するところ、本件において原告が主張する株券は、未だ株主となつていない者に対して作成、交付されているのであるから、株券発行の要件を欠いているものといわざるを得ない。ところで、法律行為の瑕疵の治癒は、法律行為として成立しているものに対して始めて可能なのであるから、右のように、法律行為として成立していないものについて瑕疵の治癒ということはあり得ず、したがつて、原告の主張するように株券の交付をうけたものがその後において株主となつたとしても、これにより株券の発行があつたとして前記株券が有効なものとなるものとは到底考えることはできない (田宮重男 西山俊彦 元木伸)