東京地方裁判所 昭和40年(ワ)7821号・昭40年(ワ)7820号
〔抄録〕
原告らの証拠申請に対する裁判所の見解
一、原告らは沖繩に所在する現地の検証ならびに沖繩に居住する証人および原告本人の尋問を求め、現地検証については当裁判所の出張による直接実施を、また人証尋問についても当裁判所の検証現場における直接実施を強く要望している。
二、考えてみると、証拠調は、裁判権の行使にほかならないが、沖繩における施政権は日米間の平和条約第三条により、今なおアメリカ合衆国にあるから、民事訴訟法第二六四条の解釈として沖繩は外国として取扱うほかはないものと考える(もっとも、右条約の効力は原告らの極力争うところであるが、訴訟の現段階では、この点の判断をすることができないから、一応右条約を有効として手続を進めるものである。)。
したがって、仮に原告らの証拠申請を採用するとしても、これが実施は右規定に則り沖繩の管轄官庁(同地には日本の大使、公使もしくは領事の駐在はない。)に嘱託して行うことになる。
三、このことを裏からいうならば、当裁判所の沖繩における証拠調の直接実施は、目下のところ、民事訴訟法第二六〇条にいう不定期間の障害がある場合といって妨げないであろう。
四、そうしてみると、原告らの証拠申請が当裁判所の出張による直接実施に限ってなされたものであるならば、当裁判所はこれを却下せざるを得ない。
五、なお原告らは沖繩住民の国政参加特別措置法の制定を根拠に、沖繩におけるわが国の施政権行使がアメリカ合衆国によって次第に承認されつつあるとし、裁判所の出方により沖繩における証拠調の直接実施も可能である以上、沖繩を民事訴訟法第二六四条の外国とみるには当らないと主張する。
しかし、右特別措置法は沖繩におけるわが国の施政権行使について定めたものではないし、まして沖繩の本土復帰前にアメリカ合衆国の施政権の一部がわが国に返還されたことに基づく立法ではないのであるから、その制定は民事訴訟法の前述の規定の解釈と全く関係がない。
なお、裁判所は民事訴訟法の適法な、運用によって訴訟を進行させる職責を有するのであって、アメリカ合衆国をしてわが国の沖繩における裁判権行使を承認させるような政治的な行動をとることを許されず、むしろ、さような行動をしないことを義務付けられているものといわなければならない。