大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)9886号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一般に宅地建物取引業者が、客の委託を受け宅地・建物の売買の仲介をするに当つては、仲介契約の本旨に従い善良なる管理者の注意をもつてこれに当り、売買契約が支障なく履行され、当事者双方がその契約の目的を達しうるように配慮すべき注意義務があり、殊に売買の手附金を売主側の代理人と称する者に交付するに当つては、その者の資格権限を充分に調査するとともに、売主との間に売買契約が有効に成立したか否かを見届けて、然る後に交付するよう注意を払う義務があり、宅地建物取引業法第一三条の法意もここにあるものと解すべきである。

ところで本件についてみるに、<証拠>によれば、前段認定の如く原告は昭和三九年一二月下旬被告方店舗に住居用土地の購入についてその仲介依頼に赴いた際、被告は原告の希望条件にそう土地を知つている者として訴外中島一を紹介し、同人とともに原告を本件土地の現地まで案内し、下見をさせたこと。右中島一は昭和三〇年一二月窃盗容疑で警察に逮捕されたこともあるが、本件土地の売買契約当時は無許可無登録のまま店舗ももたず事実上不動産売買の仲介をなしていた者であること。被告は本件契約締結日である昭和四〇年一月三一日の約一週間前に、右中島一は本件土地の地主訴外小林茂雄の代理人として本件売買契約を締結する旨の事実を知つたこと、しかし被告は本件売買契約締結の前後を通じ、右小林茂雄に本件土地の取引に関し、右中島一の代理権限について調査のため問合せたりした事実は無く、また本件契約締結の当日、原告および同人の母より右中島一と右小林茂雄の代理関係につき確認を求められたのに対し、被告は右中島とは六年来の附合いだから大丈夫ですと答え、わずかに右小林茂雄より右中島一に対する委任状と称するものをべつ見しただけで、更に右小林茂雄の印鑑証明書、権利証等代理権の存在を確認せしめる書類の提示を求めたりはせずに、原告をして右中島一に対し本件売買手附金名下に金一〇〇万円を交付せしめたこと、而して右小林茂雄の委任状なるものは右中島一が擅に作成したものであること、被告は右中島一が右手附金名下に金一〇〇万円を受取つた後同人とともに一旦右中島の自宅へ帰つたが、右手附金を真実本件土地の地主である右小林茂雄が受領したが否かも何ら確かめることなく地主側の手数料として右中島から金四万円を受取つていることがそれぞれ認められ、<中略>

右各認定事実によれば、被告は宅地建物取引業者として、本件売買契約の締結を仲介するに当り、前述の注意義務を遵守したものとは云い難く、同人にはその業務を行うにつき過失があつたものというべきである。(中島 恒)

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