大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)2609号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで、潤一が前認定のとおり本件手形を作成交付した経緯を検討するに、前記証人三浦の証言によると、前記潤一は昭和三六年五月頃不渡小切手を出して銀行取引停止処分を受けたため同人の写真材料商を継続することが不可能となつたこと、その後潤一は同人の妻である被告と話合のうえ、被告の許諾を得て被告名義を用いて銀行との当座取引をなすこととして営業を再開したこと、その際被告は潤一に対し、同人が営業のために被告名義で銀行との当座取引をする以上は潤一が被告名義の手形を振出すことも当然のこととして暗黙に許諾していたこと、潤一は本件手形をも含めて個々の手形を振出すに当り特に個別的に被告の許諾を得たわけではないが、右経緯に基づいて本件手形を作成して原告に交付したものであることを認めることができ、その反証はない。

しかして、原告本人尋問の結果によると、原告は本件手形を受取る際、潤一は被告から与えられた権限に基いて本件手形を振出すもので振出人は被告であると信じていたものと認めることができる。原告本人尋問における供述中、原告は本件手形取得当時その振出人はあたかも被告名義こと潤一であると考えていたかの如き部分は、同本人尋問における他の供述部分にてらして信用し難く、他に右認定を左右すべき証拠はない。

以上認定の事実によると、被告は商法第二三条の法意にてらして本件手形につき振出人としての責任を免れ得ないものと解するのが相当である。(奥平守男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!