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東京地方裁判所 昭和40年(手ワ)3914号 判決 1966年3月22日

原告 合資会社 高瀬組

右代表者無限責任社員 高瀬正明

被告 鈴木禮三

主文

被告は原告に対し金四二万円及びこれに対する昭和四〇年七月二五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行できる。

被告において金一五万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決及び仮執行の宣言を求め、その請求の原因として

一  原告は被告から左の約束手形一通の交付を受けた。

額面 金四二万円

満期 昭和四〇年七月二五日

支払地 静岡県田方郡

支払場所 静岡銀行修善寺支店

振出地 東京都台東区

振出日 昭和四〇年六月七日

二  右手形の振出人の名義は東京都台東区鳥越二丁目三番地東洋物産株式会社代表取締役鈴木禮三と表示されているけれども、右東洋物産株式会社なる会社は振出当時存在しなかったから、その代表資格を表示して振出した被告個人において手形債務履行の責に任ずべきものである。

三  そこで原告は満期日に支払場所に右手形を支払のため呈示したが支払を拒絶された。

四  よって原告は手形の所持人として被告に対し右手形金と満期日以後支払ずみまで手形法所定の年六分の割合による金員の支払を求めるため本訴に及んだ。

以上のように述べ、被告の主張に対し「東洋物産株式会社が現に存在することは認めるが昭和四〇年六月七日の本件手形振出当時登記上存在していたとの点及び振出事情その他被告主張事実は争う。」と述べ、証拠として甲第一号証を提出した。

被告は主文同旨の判決を求め、答弁並びに主張として

一  被告が原告主張のような手形を振出したことは否認する。

原告主張の手形は東洋物産株式会社が振出したもので、右会社は昭和三八年設立登記されて以来実在する会社である。

二  本件手形振出の事情は次のとおりである。<省略>(原因債務不存在を主張する)

理由

成立に争いのない甲第一号証によれば被告が東京都台東区浅草鳥越二丁目三番地を肩書住所地とする東洋物産株式会社の代表取締役なる資格を表示し、原告主張のような手形要件を記載した約束手形一通を振り出し原告に交付したこと及び原告が右手形を株式会社静岡銀行を経由して満期の翌日支払場所に支払のため呈示したが不渡となり、現に右手形の所持人であること、以上の事実が認定できる。

被告は東洋物産株式会社は実在の会社であるから、被告個人には手形債務履行の責任はないと主張するので、按ずるに、訴状に添付の東京法務局日本橋出張所法務事務官作成の書面及び答弁書に添付の東京法務局板橋出張所登記官作成にかかる昭和四一年一月二八日付商業登記抄本並びに本件口頭弁論の全趣旨によれば、東洋物産株式会社は本件手形振出人の肩書住所地である東京都台東区内には登記がないが、現に東京都板橋区中板橋二九番地を本店所在地として登記された実在する会社であり、被告鈴木禮三がその代表取締役であることが認められるけれども、果して右東洋物産株式会社が被告主張のように昭和三八年以来従って本件手形の振出の当時において既に登記された実在の会社であったかはこれを確認するに足りる証拠がない。

そうすると、被告は東洋物産株式会社が本件手形振出当時実在する会社であることを証明しえなかったという外はないから、無権代理人の場合と同様に自らの本件手形上の債務履行の責に任すべきものである。

そして原因債務の不存在等をいう被告のその余の抗弁はこれを認めうる何らの証拠がない。<以下省略>

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