大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)10038号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕してみれば、被告は原告に対し、昭和四一年八月一日以降本件賃貸借契約が解除となつた同年九月一四日までの月額合計二万五、三〇〇円の本件貸室の賃料及び共益費並びに同月一五日以降被告が本件貸室を明渡した昭和四二年二月一五日までの明渡遅延による右賃料及び共益費相当の損害金を支払う義務があることが明らかである。

ところで原告は、被告は右賃料及び共益費又はこれに相当する遅延損害金に対しては、昭和四一年七月一日から施行された改正借家法第七条第二項の規定の準用により支払期より年一割の割合による利息ないし遅延損害金を付して支払うべきであると主張するのでこの点について考えるに、なるほど、右規定によると、賃料増額の請求に関する裁判が確定して、賃借人が支払つた額に不足があるときは、賃借人はその不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付して支払うべきものとされているのであるから、一見、賃借人が本来の賃料を延滞した場合には、より強い理由をもつて、年一割の利息を付して支払うべきであつて、右借家法第七条第二項の規定は本来の延滞賃料又は家屋の明渡遅延による損害金に準用ないし類推適用されると解されないこともないようであるけれども、右借家法第七条第二項の規定は、従来賃料の増額請求権は形成権であると解され、従つて、賃料の増額請求がなされたときは、増額について当事者間の協議が整わず、裁判によつて増額請求の当否が決定される場合であつても、増額請求のときから後に裁判で定められる額に増額されたものと解し、賃借人は従来の賃料ないし自己において相当と認めた額の賃料を提供しただけでは、場合により賃貸借契約を解除され得るものと解せられており、このことは徒らに紛争を招く結果となるので、これを是正するため、増額請求の当否に関する裁判が確定するまでは、賃借人は賃料として相当と認める額を支払えば足り、これを提供する限り、契約を解除されることがないものとした反面、これにより賃貸人が蒙る不利益を緩和するため、賃借人が支払つた額が裁判によつて定められた額に不足あるときは、その不足額に対して特に支払期以降年一割の利息を付して支払うべきこととして、当事者間の立場の均衡を図つたものと解せられるから、右の規定を賃料の増額請求には関係のない本来の延滞賃料ないし家屋の明渡遅延による損害金にまで拡張して適用するのは相当でなく、本来の延滞料ないし家屋の明渡遅延による損害金の支払の遅延賠償は、一般の金銭債務の履行遅延の場合と同様、商事債務でない限り民法第四一九条、第四〇四条により年五分の割合によるべきものと解するのが相当である。(今村三郎)

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