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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)12530号 判決 1968年1月30日

理由

一、昭和四一年一〇月一日、原告が佐久間との間で手形、証書貸付、手形割引等の取引契約を締結するとともに、被告との間で右取引契約に基づく佐久間の債務についての保証契約および被告所有の本件土地につき、佐久間の右取引契約に基づく債務六六〇、〇〇〇円を被担保債務元本極度額とする根抵当権設定契約が締結されたこと、本件土地につき東京法務局町田出張所昭和四一年一〇月二七日受付第一七四六四号をもつて、右根抵当権の設定登記がなされたこと、右根抵当権設定登記が同出張所昭和四一年一一月五日受付第一七八六三号をもつてなされた抹消登記により抹消されたこと、昭和四一年一一月一日、原告と被告の代理人原英吾との間において、本件土地についての右根抵当権設定契約を解約する合意が成立したことは、いずれも当事者間に争いがない。

二、そこで、右根抵当権設定契約解約の合意が効力を発生し、本件土地についての前記の根抵当権が消滅したか否かについて判断する。

(1)  昭和四一年一一月一日、佐久間が原告に対して、平和洋服事業協同組合振出、金額四五四、六〇〇円の小切手を譲渡したことは当事者間に争いがない。被告は、右小切手は佐久間の原告に対する前記取引契約に基づく債務全額の、代物弁済として譲渡されたものであると主張するが、右主張事実を認めるに足りる証拠はないから、右小切手は佐久間の原告に対する債務の支払いのために譲渡されたものというべきである。

(2)  右の佐久間から原告に対する小切手の譲渡と同時になされた本件土地についての根抵当権設定契約解約の合意は、根抵当権が担保権であることからすれば、特段の事情がない限り、被担保債権である原告の佐久間に対する、前記取引契約に基づいて既に発生していた債務が完済されることを条件としたものと認めるのが相当である。証人原英吾の証言によると、佐久間が原告に対して、右小切手を譲渡した一、二日前に、平和洋服事業協同組合が商工組合中央金庫から五〇〇、〇〇〇円の融資を受け、右小切手の支払資金を有していることを同証人は、確認していたので、同証人が被告代理人として根抵当権設定契約解約の合意を結んだ際には、同証人は右小切手は確実に支払われるものと考えていたことは認められるが、これをもつて、根抵当権設定契約解約の合意が、被担保債権の消滅を条件としない特段の事情があつたものということはできず、他に右の特段の事情があつたことを認めるに足りる証拠はない。

(3)  《証拠》を合わせて考えると、昭和四一年一一月一日現在で、原告は佐久間に対して、前記取引契約に基づいて四五四、六〇〇円の債権を有していたことが認められ、前記小切手の支払いがなされたことを認めるに足りる証拠はなく、また、他に右の原告の債権が消滅したことを認めるに足りる証拠もない。

そうすると前記の根抵当権設定契約解約の合意は、その停止条件が未だ成就していないため、その効力を生じておらず、原告の本件土地についての前記の根抵当権は消滅していないといわなければならず、したがつて、その設定登記の抹消登記は、適法な原因なくしてなされたものといわなければならない。

結論

以上のとおりであるから、前記根抵当権設定登記の回復登記の申請を求める原告の本訴請求は理由があるのでこれを認容。

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