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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)4273号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕一、登録請求の範囲に記載されている要件の一部に公知の部分があつても、実用新案の技術的範囲を定める場合にその部分を要件から外して考えられるべきでない。

二、同じように竜頭を有するピンであつても、その周縁が丸味を有し、特にピンの螺挿、螺脱に便するという考案の効果を期待し得ないときは、竜頭の周辺に鋸歯を有し、前記のような効果を有する当該実用新案の技術的範囲に属しない。

〔判決理由〕

一、請求原因第一、二項の事実は、当事者間に争いがない。

二、成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)によれば、本件考案は、その登録請求の範囲に記載されているとおり、(1)周辺に鋸歯を有する竜頭のあること、(2)竜頭の下側に螺線状の針を有することという構造のピンであることをその技術的範囲とすることが認められる。

被告は、本件考案の出願前既に前記(2)の構造は公知であつたから、本件考案の技術的範囲は前記(1)に限定されるべきであると主張す。しかしながら、実用新案の登録請求の範囲に記載される要件の一部に公知の部分があるときには、その考案の新規性を探究する場合にその部分を除外して考察すれば足りるのであつて、この部分を要件から外して考えるべきではない。けだし、実用新案登録請求の範囲には考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならないのであつて、実用新案の技術的範囲は登録請求の範囲の記載に基いて定めなければならないから、請求の範囲から公知の部分を除外すれば考案の構成に欠くことのできない要件の一部を外してしまうことになり、実用新案の技術的範囲を正しく規定することができなくなるからである。被告の主張は採用に値しない。

三、そこで、本件考案と被告の製品との構造を対比すると、まず、被告の製品の扁平体1が本件考案の竜頭に相当するところ、本件考案の竜頭がその周辺に鋸歯を有するに対し、被告の製品では、扁平体1の周縁が丸味2を有する点において相違することは、当事者間に争いがない。

原告は、この相違をもつて単なる設計上の微差にすぎないと主張する。しかし、前記甲第一号証によれば、本件考案は竜頭の鋸歯をもつてピンの螺挿、螺脱に便するという効果を有することが認められるところ、被告の製品では、扁平体1の周縁が丸味2を有するに過ぎないので、特にピンの螺挿、螺脱に便するという本件考案のねらう効果はとうてい期待することができないものといわなければならない。従つて、この相違点は単なる設計上の微差といつて片付けられる程度の差異とはいえない。

してみると、被告の製品はこの点において本件実用新案の要件を具備しないから、その余の構造につき検討するまでもなくその技術的範囲に属しないものというほかはない。<以下略>(古関敏正 水田耕一 野沢明)

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