大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和41年(ワ)8189号 判決 1967年11月21日

主文

被告らは、原告に対し、別紙目録記載の土地九九・二八平方米を明渡せ。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決と仮執行の宣言を求め、請求の原因として、次のとおり述べた。

一、原告は、その所有の別紙目録記載の土地四七七平方米中別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、イの各点を結ぶ直線で囲まれた部分一九四平方米を、昭和二三年一月頃被告岩田に普通建物所有の目的で賃貸(以下「本件契約」という。)し、同被告は、右土地中別紙図面イ、ロ、ハ、ヘ、イの各点を結ぶ直線で囲まれた部分の上に建物を築造して所有している。

二、ところが、被告岩田は、同四一年一月頃以来前記賃借土地中別紙図面ハ、ニ、ホ、ヘ、ハの各点を結ぶ直線で囲まれた部分九九・二八平方米(以下「本件土地」という。)を原告に無断で被告錦織に転貸し、同被告はその自動車運送業のトラツク置場としてこれを利用しているから、原告は同年三月二七日到達の書面で被告岩田に対し、無断転貸を理由として本件契約を解除する旨の意思表示をした。

三、仮に右主張が認められず、本件土地は被告らの主張するような経緯で利用されているとしても、右土地を自動車運送業の車庫として使用することは、本件契約で定められた用法の違反であり、かつ、被告岩田の右運送業の経営は道路運送法四条一項および三六条に違反するから、土地賃貸借契約上の信義則に反するというべきである。そこで、原告は同四二年八月八日の本件口頭弁論期日において、右違反を理由として同被告に対し本件契約を解除する旨の意思表示をした。そして、被告岩田は原告の前記二で述べた契約解除の主張に対し、その主張するような理由で抗争しているから、かような場合、原告は催告なくして契約を解除することができると解する。

四、よつて、原告は、被告岩田に対し契約解除を理由として、同錦織に対し所有権に基づき、それぞれ本件土地の明渡を求める。

証拠(省略)

被告ら訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、請求原因事実中、一は認め、二は、原告主張の書面による契約解除の意思表示がなされたことは認め、転貸は否認する。と述べ、次のとおり主張した。

被告岩田は、自動車運送業を営むについて運輸大臣の免許を得ていないため、これが免許を有している被告錦織の名義を借りて右運送業を営み、これがトラツク置場として本件土地を使用しているにすぎず、被告錦織は右土地を何ら使用していない。したがつて、右トラツクも被告岩田が購入したその所有にかかるものであり、ただ、トラツクの側面に大輝運輸という被告錦織の商号を表示しているが、これは前述の経緯によるものである。

以上により、被告岩田に何ら転貸の事実はなく、これを理由とする原告の契約解除の意思表示は効力を生ずるに由なく、被告錦織は本件土地を占有していないから、原告の本訴請求は失当である。

証拠(省略)

別紙

物件目録

東京都墨田区大平町一丁目三番八号

一宅地 四七七平方米(一四四坪三合一勺)(別紙図面中ト、チ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、イ、トの各点を結ぶ直線で囲まれた部分)

のうち九九、二八平方米(同図面中ハ、ニ、ホ、ヘ、ハの各点を結ぶ直線で囲まれた部分)

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例