東京地方裁判所 昭和41年(ワ)8624号 判決
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〔判決理由〕一、責任原因
(一) 被告堤の運行供用者責任
本件事故は被告堤の従業員前田が、被告堤保有の事故車をその人夫の工事現場から飯場への送迎のため運転中、惹起したものであり、他に特段の事情も認められないから、被告堤は自賠法三条に基づき、本件事故賠償の責に任じなければならない。
(二) 被告多田建設・被告関根建設の使用者責任
被告多田建設・被告関根建設・被告堤・事故車運転者前田間に前項の事実のほか少なくとも左の各事実が認められる。
(イ) 被告多田建設は従来直営工事をすることはなく、すべて下請によつて事業を執行してき、本件事故当時も、十年来継続して、相当程度その下請をしてきた被告関根建設に代田橋近くの松原マンション建築の鳶土木工事を一括請負に出しており、被告関根建設はさらにその工事を一括被告堤に下請させていた。
(ロ) 工事現場に使用する主要な建設機械・材料は被告多田建設所有のものを、その指示のもとに使用しており、副次的なものを被告関根建設からも提供していたが、被告堤は下請工事とはいうものの、殆んど三〇名内外の工事人夫の労務を供絡するにとどまり、堤の従業員前田も事故車の運転とともに工事現場の作業に携わることも少なくなかつた。
(ハ) 工事現場には被告多田建設から現場監督一名、副監督約五名が出て設計に基づく全般的な指示はいうまでもなく、機械操作その他技術的・具体的な指導・指揮・監督を、稼働する人夫全員に直接または被告関根建設から出ている現場世話役を介して及ぼしていた。
(ニ) 工事現場の災害防止・安全管理の責任と権限は被告多田建設が受持ち、前田をふくむ現場人夫の労災保険は被告多田建設の名と負担のもとでかけられていた。
(ホ) 被告多田建設から被告関根建設へ、被告関根建設から被告堤に対する請負代金の支払は、出来高払というものの、契約による取極めというよりは、現実の工事の進渉状況による労務対価の評価に近いものであつた。
(ヘ) 被告関根建設と被告堤との請負契約もきわめて総括的なもので、すべては一切注文主ないしその委ねる者の指示に従うことになつていた。
右各事実を綜合すると、業務運営の社会的メカニズムのあり方からして、本件事故は、被告多田建設・同関根建設の被用者と同視すべき従属関係にある運転者前田が、その直接のやとい主被告堤の重畳・競合する元請人である被告両会社の災害防止・安全管理の指揮・監督が及ぶべき、その両者の事業に関連した社会的行為の範囲内で起したものといえる。従つて本件事故の損害につき、被告多田建設・同関根建設はともに民法七一五条一項に基づき損害賠償の責に任じなければならない。(舟本信光)