東京地方裁判所 昭和41年(ワ)9414号 判決 1967年3月29日
原告 横浜海運倉庫株式会社
右代表者代表取締役 筒井邦平
右訴訟代理人弁護士 清水有幸
被告 三洋産業株式会社
右代表者代表取締役 三井孝之
右訴訟代理人弁護士 岡昌利
主文
被告は原告に対し金八六万二三六五円及びこれに対する昭和四一年一〇月一四日以降完済迄年六分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを三分し、その一を原告、その二を被告の負担とする。
本判決は原告勝訴の部分につき仮にこれを執行することができる。
事実
≪省略≫
理由
≪証拠省略≫によれば、原告は倉庫業のほか港湾運送事業等を営む会社であることが明らかである。
≪証拠省略≫を綜合すると次の事実を認めることができる。即ち原告は昭和三六年二月より昭和三七年五月迄の間被告より、被告が韓国より輸入し、横浜港及び神戸港に到着した別紙明細書番号1ないし7の青のり、螢石塊及び螢石粉の沖取本船荷役(貨物を本船から艀に卸し、艀によって所定地点まで運送して陸にあげる作業)及び倉庫への入庫、保管を依頼されてこれを実施したこと、但し別紙明細書番号2の螢石塊一〇〇屯はこれを倉庫に入庫しなかったが、他の貨物はいずれも三ヶ月以上倉庫に保管したこと、これらの料金は別紙明細書の通りで、番号8ないし15の入出庫保管料追加保管料は番号3ないし7の貨物についてのものであること、(番号2ないし7の金額が沖取本船荷役に関する料金であることは、原告の自認するところである)番号1の青のりの料金一二万三三〇〇円のうち艀賃金一万二八三八円、検数料金二〇一〇円、船内荷役料金六〇三〇円及び乙仲手数料金一六七五円以上計金二万二五五三円が沖取本船荷役に関する料金で、残る金一〇万〇七四七円が入出庫保管に関するものであることが認められる。
而して港湾(但し平水区域内)における艀による物品運送業は、商法第五六九条所定の物品運送業と解すべきところ、倉庫業と港湾運送業とを兼業する業者が同一貨物につき港における沖取本船荷役と倉庫への保管を委託された場合、法律上いずれを主、いずれを従とも判定できないから、その法律関係は、前者に関するものについては商法中物品運送営業に関する規定により、後者に関するものは寄託に関する規定により律せられるべきであり、従ってこれについて生じた業者の委託者に対する債権の消滅時効についても同様に律するのが相当である。
してみれば本件債権はさきに認定したところに従い、別紙明細書中番号1の金一二万三三〇〇円のうち金二万二五五三円及び番号2ないし7の金額、以上合計金六三万三〇八八円は物品運送業者が物品運送に関し委託者に対し有する債権であるから、商法第五八九条第五六七条により一年の短期時効により消滅し、明細書中1の金一二万三三〇〇円のうち金一〇万〇七四七円と番号8ないし15の金額の計金八六万二三六五円は倉庫業者が倉庫業に関し委託者に対し有する債権であって、短期時効の特則がないから、商事債権としてその消滅時効は五年と解すべきである。尤も前記高野証人の証言によれば、別紙明細書中番号2の螢石塊一〇〇屯の沖取本船荷役賃金一〇万〇四一〇円中には、艀に載せたまま右螢石塊一〇〇屯を約七日間保管した料金も含まれていることが判るが、右は艀による運送未了の間における保管と解すべきであるから、物品運送に関して生じた債権と言うべきであり、前記の判断に差異を来たすものではない。
次に時効期間の起算日について、被告は昭和三七年七月三一日と主張し、原告は昭和三七年六月一六日であるとし、更に同年七月六日被告が本件債務を承認したと主張するが、そのいずれによるにせよ、本訴の提起された昭和四一年一〇月三日迄に四年以上五年未満の期間を経過しているから、本件債権中物品運送に関し生じた金六三万三〇八八円については一年の短期消滅時効が完成し、これに反し入出庫保管に関し生じた金八六万二三六五円については五年の消滅時効が完成していないことは明らかである。
よって原告の本訴請求は右金八六万二三六五円とこれに対する訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四一年一〇月一四日以降完済迄年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、仮執行の宣言につき同法第一九六条を夫々適用して主文の通り判決した。
(裁判官 室伏壮一郎)
<以下省略>