大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(特わ)466号・昭41年(特わ)493号・昭41年(特わ)492号・昭41年(特わ)482号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕別表第一記載の写真機二五二台、八ミリ撮影機一台およびこれらの附属品六六点は、前示のとおり被告人銭文厳、同高橋誠、同魏徳夫の判示第六記載の犯罪にかかる貨物であるが、その所有者は右被告人らと共犯関係に戴鴻鈞であること、そして検察官は刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(以下単に措置法と略称する)の規定に基き、その物件の所有者を戴鴻鈞と表示し、同人の所在が分明でないとして所定の公告をしたことはいずれも証拠によつて認め得る。ただ検察官のなした右公告によると、没収すべき物の品名、数量その他その物を特定するに足りる事項として、昭和四一年東地領第一〇、三三〇号中、カメラ二五三台、同附属品五五点と表示しているが、実際に押収されて存在する物は写真機二五二台、八ミリ撮影機一台およびこれらの附属品六六点であつて、品名において一種(すなわち八ミリ撮影機一台を写真機として表示)、附属品の数量において一一点の相違を存し、この部分については果して有効な公告がなされたものと言い得るか否か、従つて没収が可能であるか否かが問題となろう。

ところで措置法第二条において、検察官が公訴を提起した場合、第三者の所有に属する物の没収を必要と認めるときはすみやかに第一項第一号ないし第七号に掲げる事項をその第三者に告知するか、または公告すべきことを規定しているが、この趣旨は、第三者の所有に属するある特定の物が他人の刑事被告事件に関連して没収の対象となつていることを具体的に了知させることにより、その第三者をして自ら当該被告事件の手続に参加して弁解、防禦をする必要ないし実益があるか否かについて瑕疵のない意思決定をなさしめ、もつて権利の行使に支障なきを期するにあると解される。従つて検察官のなした告知または公告の内容の一部が事実と相違する場合、その有効、無効を判断するに当つては、その齟齬が第三者の右意思決定の過程または内容に何らかの瑕疵を生ぜしめるおそれがあると認めるに足るものであるか否かを基準とすべきである、若しその齟齬が第三者の意思決定の過程または内容に瑕疵を生ぜしめるおそれがない程度に軽微なものであれば、窮極において措置法の趣旨とする第三者の権利行使の保護に欠けるところはないのであるから、敢てその告知または公告の齟齬する部分を無効とする理由はないものというべきである。

いまこれを本件について見るに、検察官のなした公告の内容と客観的な事実との間に存在する齟齬は、前示のとおり没収すべき物の品名、数量のうち、品名において一種と数量において写真機等の附属品一一点であつて、爾余の写真機二五二台と附属品五五点の範囲に関しては何ら齟齬は存しない。この齟齬は物全体に比較すると数量的にも財産的価値の点においても僅少であるということができる。さらに右公告の内容にはそのほか、本件被告事件の要旨並びに被告人の氏名が明らかにされていることにより、被告人銭文厳らが昭和四一年七月五日、東京国際空港において本件写真機等を香港へ密輸出しようとしたが、税関職員に発見されて未遂に終つたものであることが容易に了知し得る。これらの事実を併せて考察すれば、右のような齟齬は極めて軽微なものであつて、その物の所有者たる戴鴻鈞をして本件被告事件の手続に参加すべきか否かの意思決定の過程または内容について瑕疵を生ぜしめるおそれはないものと認められる。

以上の理由により、本件に関する検察官の公告は、右の齟齬が存するにしても全体的に包括して有効なものとして差支えないのであるから、別表第一記載の写真機二五二台、八ミリ撮影機一台およびこれらの附属品六六点全部について没収し得るものと解する。(近藤 暁)

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