東京地方裁判所 昭和41年(行ク)31号 決定 1966年8月15日
申立人 中央労働委員会
被申立人 大洋自動車交通株式会社
主文
被申立人は被申立人を原告とし申立人を被告とする当庁昭和四一年(行ウ)第五号行政処分取消請求事件の判決が確定するまで、申立人が中労委昭和三九年(不再)第四二号事件において維持した東京都地方労働委員会の昭和三九年一〇月二七日付命令(都労委昭和三八年(不)第六七号不当労働行為申立事件)に従い、岩下友武を昭和三八年一〇月当時の原職またはこれに相当する職場に復帰させ、解雇から復職までの間に同人がうけるはずであつた諸給与相当額をその間の中間収入を控除の上支払わなければならない。
(裁判官 川添利起 園部秀信 西村四郎)
緊急命令申立書
申立の趣旨
被申立人大洋自動車交通株式会社は、申立人が被申立人になした中労委昭和三十九年(不再)第四十二号不当労働行為再審査申立事件(昭和四十年十二月二十八日交付)に従い、原告大洋自動車交通株式会社、被告中央労働委員会間の御庁昭和四十一年(行ウ)第五号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで、「被申立人は、岩下友武を原職に復帰させ、同人が解雇の日から原職に復帰するまでの間に受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。」との決定を求める。
申立の理由
一、申立外岩下は、昭和三十六年九月十三日、被申立人に採用され、タクシー運転手として勤務していたが、昭和三十八年十月九日解雇された。
二、これに対し、申立外岩下の所属する申立外大洋自動車交通労働組合は、同人とともに、東京都地方労働委員会に対し、被申立人の右解雇措置は、労働組合法第七条第一号および第三号に該当する不当労働行為であるとして救済の申立てを行なつたが、同委員会は、審査の結果、昭和三十九年十月二十七日付をもつて、別紙疎甲第一号証の二の「主文」に記載のとおりの命令を発し、右命令は、同年十一月四日被申立人に交付された。
三、被申立人は、右命令を不服として、昭和三十九年十一月十九日申立人委員会に再審査の申し立てを行なつたが、申立人委員会は、審査の結果、昭和四十年十二月二十二日付で、別紙疎甲第一号証の一の「主文」に記載のとおりの命令を発し、右命令は、同年十二月二十八日被申立人に交付された。
四、右救済命令に対し、被申立人は、昭和四十一年一月二十六日不当労働行為救済命令の取消しを求める旨の行政訴訟を提起し、右事件は、御庁昭和四十一年(行ウ)第五号事件として目下審理中である。
五、申立外岩下は解雇されて以来、今日まで不安定なアルバイトにより生計を維持しており(疎甲第二号証)、もしこの訴訟の解決するまで、申立人委員会の発した前記命令の内容が実現されないならば、前記救済命令を受けた申立外岩下は精神的にも物質的にも回復すべからざる損害を蒙ることは明らかである。
また、申立外岩下の解雇取消し、原職復帰を要求する申立外大洋自動車交通労働組合の申入れにも応じようとしない被申立人の態度を考慮するとき(疎甲第二号証)、申立外岩下が救済命令を受けたにもかかわらず、同人の原職復帰が実現されないならば、被申立人事業所における労働組合組織上回復すべからざる団結権の侵害をうける危険を招来することにもなる。
以上の諸事情が現状のまま黙過されるならば、ひいては労働組合法上の立法精神は没却されることになるので、申立人委員会は、昭和四十一年五月四日第五一〇回公益委員会議において、労働組合法第二十七条第八項の規定により、本件緊急命令申立てを決議した。
よつて本件申立てに及んだ次第である。
(別紙)
命令書
(東京都地方労働委員会昭和三八年(不)第六七号 昭和三九年一〇月二七日命令)
申立人 大洋自動車交通労働組合外一名
被申立人 大洋自動車交通株式会社
主文
一、被申立人は、申立人岩下友武を原職に復帰させ、同人が解雇の日から原職に復帰するまでの間に受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。
二、その余の申立は、これを棄却する。