東京地方裁判所 昭和42年(むのイ)640号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕二、準現行犯逮捕の性質、とくに準現行犯逮捕については裁判官の令状を要せず、かつ、私人もこれをすることができることからすると、準現行犯逮捕が許されるためには、原則として、被疑者の挙動、証跡、その他の客観的状況(被害者等の事前の通報等を含む。)により、誰の目にも罪を行い終つてから間もないことが明らかであることを要するものと解すべきである。職務質問(一種の任意の取調べと解される。)等によつてはじめて犯罪が明らかになつた場合には、緊急逮捕の手続により、犯罪の嫌疑の有無等について裁判所の審査を受けさせるのを相当とする。ただ、客観的状況からみて、罪を行い終つてから間がない疑いがきわめて高い場合、簡単な、いわば確認的な職務質問を行い、その結果罪を行い終つてから間がないことが明らかと認められるに至つたときは、準現行犯逮捕が許されると解される余地がないでもない。
一件資料によると、事件においては、警察官が被疑者を呼びとめて職務質問を開始した際には、深夜(午後一一時四五分頃)ではあるが、被疑者は単に土工風の姿で、ボストンバックを肩にかけて派出所前を歩いていたというにすぎず、直ちに罪を行いつて間がないことが明らかであるとはいえないばかりでなく、その疑いもそれほど高いものといえず、それ以後の一連の職務質問に対する被疑者の供述等によつてはじめて銅線窃取の事実が明らかとなつたに過ぎないのである。従つて、右の場合、緊急逮捕によるのは格別、準現行犯逮捕は許されないとした原裁判は相当である。(寺尾正二 吉丸真 竜岡資晃)