大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(むのイ)684号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕被疑者は、現行犯人として逮捕されたものであるところ、原決定はその逮捕手続が違法であるとして、本件勾留の請求を却下したものであるので、まずこの点について判断する。

被害者の司法警察員に対する供述調書及び現行犯人逮捕手続書によれば、次の事実が認められる。

Iは、東京都新宿区……番地においておにぎりや「I」を経営しているものであるところ、昭和四二年一一月一八日午後一〇時頃、かねてから客として来ていた被疑者が、他で飲酒の上、来店し、更に同店でも飲酒していたが、その際他の客と口論などして、午後一一時一五分頃、同店が看板になつたので一旦外に出たが、再び一人で同店に引きかえし、同女が断わるのに強いて酒を出させて、これをのみながら同女に対し、この店は冷たいなどと文句をつけ、同女が看板だから、と云つて帰宅を求めても、これに応ぜず、止むなく同女が一一〇番をかけようとするとこれを妨害し、危険を感じた同女が店外に出ると被疑者もこれに追随し、再度店内に戻ると、被疑者も同様店内に入り、同女にいやみを云つていた。

そのうむ翌一八日午前零時すぎ頃、同女が心臓が痛いと云つて、同店のカウンター内にうずくまると被疑者は、しばらくこれを看病していたが、そのうち、やにわに同女を抱きかかえるようにして同店奥二畳の間に連行し、同所で同女の尻をさすり、後方から同女にのしかかつたり、しがみついたりし、同女が右二畳の間に接する板の間に逃げようとすると後ろから抱きかかえて、同女の陰部に手をふれるなどの猥褻行為をし、その際同女に全治まで、一週間を要する両下腿擦過傷の傷害を負わせるにいたつた。そこで同女は同店の電話で一一〇番しようとしたが被疑者がこれを妨げたので直ちに、はだしのまま、同店を飛び出して隣家の河村方に赴き、同人方女中に一一〇番により警察に通報して貰つた。

その結果、同日午前零時四〇分頃、警視庁牛込警察署K派出所で勤務中の司法巡査川上勇治及び同海野昭が本署からの本件被害の急報に接し、直ちに近所の本件被害現場に赴き、同女に会い、一緒に同店内に入つたところ、同女が犯人は奥の部屋にいる旨指示したので、同店奥の二畳間をみると、被疑者が横になつていたので、同日午前零時五〇分強制猥褻及び傷害の現行犯人と認めて逮捕したものである。

被疑者は、以上のごとき経緯で逮捕されたもので、これは現に罪を行い終つた者であるとして逮捕されたものであることは記録上明らかであるが、現に罪を行ない終つた者であるとするためには、犯罪の実行行為の終つた瞬間はもとより、その後、多少の時間のへだたりがあつたとしても、犯罪行為の行われた痕跡が、まだ明瞭な状態にある場合をいうものであるところ、本件においては前判示のごとく、被害者は、被害直後、はだしで飛び出して隣人に一一〇番で警察に急報して貰い、その報せを受けた前記司法巡が直ちに本件現場に急行して、同所で、これを逮捕したのであるから、時間的にも後記の如く、本件犯行直後で、それ程へだたつていない時であると認めるのが相当であり、本件犯行現場は、おにぎりやの奥二畳の間で、しかも閉店後、午前零時すぎであるから、他の男の出入りも全く予想されないところに被疑者が横たわつていたものであり被害者も、その場に居合わせて奥二畳の間に寐ていた被疑者を犯人として指示しているのである本件犯罪行為が行なわれた痕跡も明瞭な状態であるといわなければならない。

I作成の告訴状及び被害届によれば、被害の日時は同日午前零時一五分頃である旨の記載があるが、前判示のごとく前記司法巡査が本署から通報を受けたのが、同日午前零時四〇分頃であること及び被害者が前判示のごとき経緯で一一〇番したことからすれば、この右被害時刻の記載は必ずしも措信することができず、それより更に遅く、すなわち、右司法巡査が通報を受けた時よりも一〇分以上もさかのぼるものとは認められず、被疑者の逮捕に近接した時間とみるのが相当である。

してみると本件逮捕手続は適法な現行犯人逮捕というべきである。(播本格一 近藤和義 鈴木之夫)

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