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東京地方裁判所 昭和42年(ヨ)2373号 判決 1970年1月30日

申請人

山口祐司

水谷はるみ

(旧姓西川)

右申請人ら訴訟代理人

山根晃

外二名

被申請人

三元貿易株式会社

右代表者

小岩貞義

右訴訟代理人

興石睦

外二名

主文

1、申請人らが被申請人に対し、労働契約上の権利を有することを仮に定める。

2、被申請人は、昭和四二年一〇月一日以降本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り申請人山口に対し一ケ月金三三、五〇〇円を、同水谷に対し一ケ月金二四、〇〇〇円をそれぞれ仮に支払え。

3、訴訟費用は被申請人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被申請人は、中国との貿易を主たる業務とする株式会社であり、申請人山口は昭和四〇年四月一九日、同水谷は昭和四一年七月一一日それぞれ会社に入社し、その業務に従事してきたものであるところ、申請人らは昭和四二年九月二七日いずれも会社により解雇された。

右解雇当時毎月二五日限り、申請人山口は一ケ月金三三、五〇〇円、同水谷は一ケ月金二四、〇〇〇円の賃金を得ていたが、会社は、右解雇を理由に解雇以後の賃金を支払わない。

以上の事実は当事者間に争いがない。

二申請人は、右解雇は、不当労働行為、労働基準法三条違反あるいは解雇権の濫用として無効であると主張し、被申請人は、まず、(一)、会社の友好商社としての特殊性を主張し、これを前提として、(二)、本位的主張として、申請人らの日中友好貿易の破壊を目的とする非行を、(三)、予備的主張として、申請人らが懐く信条とそれを公言した事実を解雇の正当理由であると主張するので、以下右(一)、(二)、(三)、の順に判断する。

(一)、会社の企業としての特殊性について考える。

<証拠>を総合すると、次の事実が認らめれ、右認定に反する疎明はない。昭和二五年日中友好協会が設立され、民間の力で日中貿易が再開されたが、昭和三三年長崎の中国展における中国国旗侮辱事件を機に日中貿易は途絶した。その後昭和三五年に再び日中貿易が開始されたが、これは政治三原則((イ)中国を敵視しないこと、(ロ)二つの中国を作り出すようなことをしないこと、(ハ)日中国交回復を妨げないこと)、貿易三原則((イ)政府間の協定、(ロ)民間の契約、(ハ)個別的な配慮取引)、政経不可分の原則(日中両国間の政治経済関係の発展は必ず結合させなければならず、切離すことはできない。)に基礎を置く、日中友好を願う民間企業の個別取引であり(日中貿易が政治、貿易三原則、政経不可分の原則に基礎を置くことは当事者間に争いがない。)、右取引に従事する商社は友好商社と呼ばれ、友好商社となるには、前記諸原則を遵守する決意を有し、日本の日中友好協会、国際貿易促進協会、日中貿易促進会、革新政党の推薦があり、且つ、中国国際貿易促進委員会の同意を得ることが必要であつた。

申請人らが会社に入社した後である昭和四二年二月二七日日本国際貿易促進協会等の代表と中国国際貿易促進委員会代表との間で「議定書」が調印され、続いて同年三月一七日には日本国際貿易促進協会訪中友好貿易代表団と中国国際貿易促進委員会との間で「共同声明」が調印されたため、以後日中貿易は、前記諸原則のほか、右議定書、共同声明の精神に則つて行われるべきこととなつた(このことは当事者間に争いがない。)。右両文書は、毛沢東思想及び中国における文化大革命を賞讃すると共にこれを日中貿易の指導理念とすべきこと、日中友好と貿易を発展させるためには、アメリカ帝国主義、日本の反動派、ソ連現代修正主義指導グループ及び日共修正主義分子と徹底的に戦わなければならないことを定めている。

(二)、次に被申請人が、日中友好貿易の破壊を目的とする行為であると主張する申請人らの行為について考える。

1  申請人山口が、昭和四二年一月二八日の業務会議で、同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催される春季交易会に備えて、業務を割当てられたことは当事者間に争いがない。

被申請人は、「申請人山口は、自己の担当業務を放棄して、四六時中机上に英語学習の本をひろげ、これに専念する風を装つて、右交易会開始までこの状態を続け、会社からの再三の注意にも拘らず、態度を改めなかつた。」と主張し、<証拠判断省略>、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。

2  会社が、同年五月二二日申請人山口に対し輸出入関係の新たな任務を命じたことは当事者間に争いがない。

被申請人は、「申請人山口は、右任務を完遂する旨誓約したにも拘らず、またもや右任務の一部を遂行したに止まり、他の任務を放棄した。」と主張し、<証拠判断省略>、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。

3  同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催された春季交易会において、申請人山口が坂下化学機器株式会社関係の業務を担当したこと及びその後梱包費のことで問題が生じたことは当事者間に争いがない。

被申請人は、「申請人山口がメーカーとの見積打合せを怠り、このため梱包費一万九二〇円の損失を会社に与えた。」と主張し、<証拠>によれば、坂下化学機器株式会社が梱包費の支払いをしないため、結局、会社が梱包費として一万九二〇円の支払いをしたことが認められるが、右疎明だけでは、これが申請人山口の責任によるものであるとまでいうことはできない。なお、<証拠>(申請人らは、この証拠は時機に遅れて提出されたものであるから却下されるべきであると主張するところ、右証拠はいずれも最終口頭弁論期日に提出され、右期日には申請人山口も出席していたことは記録上明らかである。しかして右証拠はいずれも書証であるから即時に取調べることが可能であり、且つ、本件は仮処分申請事件であつて、口頭弁論が開かれた場合でもその立証は疎明の程度で足りるのであり、右書証の成立について必ずしも申請人らの認否を要するものではないばかりか、本件訴訟の経過に照らせば、右書証は申請人山口がその作成に関与したものとして提出されたことは明らかであるから、即時に認否することも可能であるというべく、また、当裁判所はその反証の必要性も認めなかつたのであるから、右書証の提出により、如何なる意味においても訴訟が遅延するとはいえないので、申請人らの主張は採用できない。)によれば、坂下化学機器株式会社関係の契約の際の見積書には梱包に関する記載は全くなく、注文書には、「包装」として「長い海上輸送に適し、湿気、衝撃、さび、手荒な扱いから内容物を保護する新しい頑丈な木製の航海に耐える容器」との記載があり、取引額は合計三六〇万五、八五〇円となつていること、しかるに注文書副本には、右記載のほかに、取引額に一万八〇〇円が加算されているが、そのほかに商品の単価が訂正されており、その増加分が一万八〇〇円となることが認められるので、右一万八〇〇円の加算の記載をもつて、梱包費に関するものということはできず、その余の記載をもつて梱包費に関するトラブルが申請人山口の責任によるものであることを認めるに足りないので、結局、右<証拠>をもつてしては被申請人の主張を認めるに由ないものというべきである。そして、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。

4  被申請人は、「昭和四二年五月から九月の間、申請人らは、業務に精励する従業員後藤享二に対し、『非労働者的だ。』と嘲笑する一方、同人を徹底的に疎外し、これがため後藤は常に不快の念にかられていた。」と主張し、<証拠判断省略>他に右事実を認めるに足りる疎明はない。

5  同年二月二八日善隣学生会館において、華僑学生等と日本共産党員等との間に暴力事件が発生したこと及び同年三月以降社長の度重なる指示にも拘らず、申請人らが華僑学生を防衛するため現場へ行かなかつたことは当事者間に争いがない。しかして、<証拠>によれば、申請人らは応援に行かない理由として「真相がよくわからないから。」と述べており、会社としても、応援に行くべきことを業務命令として指示していたのではないことが認められ、他に右認定を左右するに足りる疎明はない。

被申請人は、「右事件は、日本共産党員等が華僑学生等を襲撃したものであり、申請人山口は、加害者側である日中友好協会の事務所に出入し、相手方と気脈を通じた。」と主張し、<証拠判断省略>他に右事実を認めるに足りる疎明はなく、また、申請人山口が解雇前に日中友好協会事務所に出入して気脈を通じていたことを認めるに足りる疎明もない。

6  昭和四二年になつて、会社が被申請人主張のような集会やデモを行なつたこと、申請人山口は七月二一日、八月二九日を除き、同水谷は六月二日を除き、その余の集会やデモに参加しなかつたこと及び八月二九日のバスによるデモ行進には申請人山口が参加したことは当事者間に争いがない。<証拠>によれば、右のほか申請人山口は七月二一日の東条会館における集会に、同水谷は六月二日の農協ホールにおける集会に参加したこと及び申請人らは業務命令として参加を指示されたときには参加したが、そうでないときには参加しなかつたことが認められ、右認定を覆えすに足りる疎明はない。

7  申請人山口が中国語で電話したことがあること及び申請人らが昼食時に二、三時間も事務所を離れることが多かつたことは当事者間に争いがない。しかして、<証拠>によれば、申請人山口が中国語で電話したのは、同人は中国生まれで、中国の大学を中退して日本へ帰つて来たために弟と電話で話していたときに自然に中国語を使つてしまつたにすぎないこと、会社は小さい会社であり、就業時間が必ずしも決つておらず、仕事で出かけるついでに昼食をすませて来るということが多く、申請人らが昼食時に二、三時間も事務所を離れることが多かつたのもこのためであることが認められ、<証拠判断省略>

<証拠>によれば、申請人らに対し私用の電話がかかつて来た際、右電話に申請人ら以外の者が出ても相手方は名乗らず、申請人らが不在であることを確認するや、そのまま電話を切つてしまうことがしばしばあつたことが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。

被申請人は、「申請人らは、執務時間中でもしばしば近くの公衆電話を利用してかなり長時間外部と連絡していた。」と主張するが、右事実を認めるに足りる疎明はない。

被申請人は、(本位的主張)の(7)において(イ)ないし(ニ)の事実を主張して「申請人らは、会社の事務所を旧日中貿易促進会労働組合、貿易一般労働組合又はその同調者との連絡場所として使用していた。」と主張するが右(イ)ないし(ニ)の事実は以上認定したとおりであるから右認定事実からは、右主張事実を認定することはできず、また、他に右事実を認めるに足りる疎明もない。

8  以上認定したところによれば、申請人らは、善隣学生会館事件が起つた際の会社の華僑学生の応援行動、会社が行なつた各種のデモや集会に、業務命令として参加することを命じられた時以外は参加しなかつたのであるから、会社のこれら行動に関する限り積極的に参加してこれに協力する態度をとつていなかつたということができる。しかしながら会社の前記認定の特殊性を考えても、会社の右行動が会社の業務執行行為の範囲に属する行為とはいえず、更らに後に(三)、において認定する申請人らの入社の際の約束を考慮しても会社の右行動に参加することが申請人らの労働契約の内容となつていたものと解することはできない。そうすると、申請人らが会社の右行動に非協力的であつたことをもつて、申請人らを解雇するための理由とはなし難いから被申請人の本位的主張は失当である。

(三)、次に被申請人の予備的主張である「会社には前記のような特殊性があり、申請人らもこれを充分承知のうえで、積極的に前記諸原則を実践することを確的して入社したにも拘らず、会社の方針と全く反する思想、信条を懐き、且つ、これを公言したものであるから、申請人らはこの一事を以て解雇の正当事由とすることができる。」との点について考える。

1  <証拠>によれば、申請人山口は、会社に入社する前にも同じく日中友好貿易に従事する商社に勤めていた関係で、友好商社が前述のような特殊性を有することを知悉しており、会社に入社するに際して特に前記諸原則の説明を受けなかつたが、右諸原則についても充分知つており、且つ、これを遵守することを約して入社したものであり、同水谷は、社長から会社の特殊性及び右諸原則についての説明を受け、これを遵守することを約して入社したものであることが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。

2  <証拠>によれば、次の事実が認められ、<証拠判断省略>

申請人らは、昭和四一年八、九月ごろから中国に対して批判的となり、申請人らの入社後に調印された議定書及び共同声明に対しては、これらの文書は一方的に毛沢東思想を日本の貿易業界に押しつけるものであるとして、反対の考えをもつていたところ、会社では右両文書についての理解を深めるという趣旨から、共同声明の調印に参加した小岩社長が帰国してから、社内で学習討論会議等を行なつたので、そのような際に申請人らは、積極的には賛否の意見を表明しなかつたが、「右両文書には特定の思想を礼讃する内容が含まれているのに、それを会社が一方的に労働者に押しつけるのは不当ではなか。」といつて、暗黙のうちに右両文書に反対する態度を示した。

右認定事実に基いて被申請人の右主張の当否を判断するに、憲法一四条一項の定める法の前の平等、信条による差別待遇の禁止は、本来、国家権力が、個人の信条によつて労働関係(その他政治関係、社会関係)において国民を差別して取扱つてはならないことを定めたものであるから、私人相互間の法律関係に憲法一四条が直接的な効力を及ぼすものではない。ところが、労働基準法三条は、右憲法的公序に副つて使用者は、労働者の信条を理由に解雇その他の差別待遇をなしてはならない旨規定している。したがつて、労使たる私人相互間の法律関係においては、一応、使用者は、労働者をその信条を理由として解雇することはできず、かかる解雇は無効となる。しかしながら、憲法一四条の直接効を受ける分野においても、例えば、国家公務員の身分関係の如き特別権力関係においては、国家公務員が全体の奉仕者であることから生じる中立性の保持或いは身分の保障のためという公務員制度上の要請と憲法の志向する民主主義国家における基本的人権不可侵の理念とが調和する合理的範囲内において、国家公務員の信条の自由の保障が制限される。これと同じような考え方から、労働基準法三条が適用される労使の関係においても、企業の存続、発展という要請と労働基準法が志向する個別的労働関係における労働者保護の理念とが調和する合理的範囲内で労働者の信条の自由の保障が制限される場合があることは肯定しなければならない。しからば、右にいう合理的範囲とは、何を基準として判断されるべきものであろうか。抽象的にいえば、右基準は、労働者の有する信条の表現ないしは信条に基く行為が企業の運営を著るしく阻害することであるとするのが相当である。そしてその具体的な適用に当つては、労働者の信条の内容、企業の目的が右信条と矛盾する特殊性、労働者の企業内における地位、信条の表現方法、表現時期、場所等諸般の事情を考量した上、労働者の信条の表現が企業の運営を著るしく阻害する場合に、企業としては当該労働者を排除する等差別的取扱をすることが合法化されると考えるべきである。したがつて、若し、労働者の信条の表現が企業の運営を阻害しているとの具体的事実がないならば、労働者の信条の表現が、単に抽象的に企業の特殊性と矛盾しているとか、企業の経営者の信条と異るとか、両者の属する宗教団体、政党その他の政治団体或いは経済団体その他の団体が異るからというが如き事由では、それらの事柄が労働契約の内容となつている場合と然らざる場合とを問わず、使用者が労働者を解雇その他差別待遇をすることは違法であり、そのような行為は公序に反するものとして無効であるといわなければならない。

そこで本件についてみるに、前記のとおり、会社は友好商社であり、その業務を遂行するためには、政治、貿易三原則、政経不可分の原則のほかに、議定書、共同声明の趣旨にも従うことが必要とされていたのであつて、この点において通常の企業には見られない特殊性を有する。しかしながら会社は、あくまで貿易を業務とする株式会社であつて、同一の信仰の対象と教義を持ちそれに基いて礼拝祈祷の儀式を行ない布教を行なつて共同の信仰生活をすることを目的とする純粋の宗教団体とは著るしくその存在目的、意義を異にしているといわれざるを得ない。なんとなれば宗教団体においては異教者がその団体に存在すること自体が団体の存在目的意義と直ちに矛盾し、それを許容することはその存在目的・意義を失わしめることになるものと考えられるところ、本件においては、会社内に議定書、共同声明に反対の態度を会社内で表明した従業員が居ることによつて直ちに、反対商社としての存在目的・意義そのものが失われるという事実について疎明はない(もつとも、<証拠>には右趣旨に副う部分もあるが、たやすく措信できない。)から、会社は、宗教団体とその存在目的・意義を異にするといえるのである。そうすると、会社の右特殊性とは、あくまでも対中国との関係において意味を有するものであつて、その従業員が議定書、共同声明の趣旨に反対したため、会社が中国との友好貿易を遂行するうえで妨げとなるという事態が発生したときに、初めてそのことを理由として当該従業員を解雇することができるかどうかが問題となるのであつて、そのような従業員が存在すること自体では未だ従業員の処遇を問題にすることはできないものというべきである。従つて、本件においては、会社内において議定書、共同声明に反対の態度をとる申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務の遂行に如何なる影響を及ぼすかということが、検討されなければならない。

しかして、申請人山口が昭和四一年秋の広州交易会終了後北京に行く予定であつたところ、中国側から北京に入ることを断わられたことは当事者間に争いがなく、申請人らが昭和四一年八、九月ごろから中国に対して批判的な態度をとるようになつたことは前認定のとおりである。被申請人は、申請人山口が北京へ入れなかつたのは、同人の反中国的態度の結果であると主張し、<証拠判断省略>、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。

<証拠>によれぼ、友好商社のうちのある会社が反中国的な立場に立つたために中国との取引が停止されたことが認められるが、これは会社自体が反中国的立場に立つた場合であつて、本件の場合のように、会社代表でも幹部でもなく、入社後数年を経過したにすぎない若年未経験の申請人ら(以上の事実は申請人ら各本人尋問の結果によつて認める。)が、社内において前記両文書に反対の態度を表明しているものとは事案を異にし、必ずしも被申請人らの右主張の裏付けとなる資料ではない。また<証拠>には、申請人らが会社の従業員として止まることは取引上不利であるとの部分があるが、右部分は具体性に乏しくたやすく措信できない。

その他、申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務を遂行するうえに妨げとなることをうかがわせる事実の疎明はない。

してみると、本件において会社が、申請人らが議定書、共同声明に反対の態度をとつたことを理由として申請人らを解雇したことは、何らの合理的な理由もなしに申請人らの思想、信条を理由として差別的取扱をしたことに帰し、憲法一四条、労働基準法三条に基づく公序に反して許されないというべきであるから、申請人らが右のような態度をとるに至つた原因その他について判断するまでもなく被申請人の予備的主張は失当であることは明らかである。

(四)、以上のとおり、被申請人の主張する解雇理由はいずれも理由がなく、結局、本件各解雇はいずれも正当な理由なくしてなされたもので、解雇権の濫用として無効であるというべきである。

三しかして、申請人らは賃金を唯一の生活の資とする労働者であるから、他に特段の事情がない限り、保全の必要性もまた存するものというべきところ、本件においては、特段の事情についての疎明がない(かえつて、申請人山口本人尋問の結果によれぼ、申請人山口は現在職に就かず、カンパによつて生活していることが認められる。)ので、結局、申請人らの本件各申請は、いずれも理由があるものというべきである。

よつて、申請人らの申請をいずれも認容し、訴訟費用につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(西山要 島田礼介 瀬戸正義)

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