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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)12432号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(二) 逸失利益 六七四万二二九六円

<証拠>によれば、原告は、大正五年九月二四日生れの男子であつて、昭和一一年前橋市立商工専修学校機械科を卒業し、機械技師として池貝鉄工所および関東殖産工業株式会社に勤務した後、昭和二四年一二月に独立し、曲輪鉄工所の名称で各種工作機械等の部品加工および修理業を営み、現在に至つていること、本件事故の発生した昭和三八年九月現在における曲輪鉄工所の企業規模は、従業員六〜七名(うち常雇三名)、保有工作機械は、同年八月に購入したフライス盤一台を含めて数台といつた程度のものであつて、対外的折衝はすべて原告が行ない、部品加工等の作業にあつても、精密さが要求されるものについては、従業員より数段技能の勝れた原告が主として担当し、これらの作業に従事する時間も、通常従業員が午前八時から午後八時頃までであるのに対し、原告の場合は、早朝から深夜に及ぶことも少なくなかつたこと、所得税の青色申告によると、曲輪鉄工所の企業収入は、昭和三六年度が四三六万三〇二二円、昭和三七年度が六〇一万九三六一円、昭和三八年一月から八月までが五六四万七六六〇円であつたが、右収入の九〇パーセントを超える主要発注先である関口工業株式会社との間で、同年八月二二日、従来の約二倍にあたる月間約一二六万円の取引(右会社の製作にかかる建材ブロックの製造機械であるブロックマシンの型枠の部品製作加工)を行なう旨の打合せがなされ、その結果同年九月には右会社関係の加工収入が一一一万〇一六三円に達し、他の取引先関係の収入を加えると、同月の収入は一一六万五八五〇円に増加したこと、右収入から諸経費等を控除した再算出所得は、昭和三六年度が四二万七八七六円、昭和三七年度が四五万五八八六円であり、収入を右所得で割つて算出した純利益率は約8.5パーセントであることが認められる。

以上の事実によると、曲輪鉄工所は、特段の事情がない限り、同年一〇月以降において月一一〇万円程度の収入を継続してあげ、収入の増加に伴なう純利益率の上昇を考慮すると、月一〇万程度の純利益を得べかりしものと推認される。

しかるに、<証拠>によれば、原告が前記傷害(編注、頸椎損傷)を受けた以後に得た現実の収入は、昭和三八年一〇月から一二月までが合計八一万四五二三円、昭和三九年度が六三七万八二四二円、昭和四〇年度が五二一万一九八三円、昭和四一年度が五七四万〇九八一円、昭和四二年度が五七六万九一二五円にとどまり、所得も昭和三九年度が五一万六三七三円、昭和四〇年度が六万八七八一円、昭和四一年度は所得がなく二七万八〇〇九円の欠損、昭和四二年度が六七万六八三五円に過ぎなかつたこと(昭和四〇〜四二年度における青色申告による再算出得は右と大幅に異なるが、これは昭和四〇年度中および昭和四一年度中に購入した工作機械につき租税特別措置法第一一条第一項の表二による合理化機械特別償却を行なつた結果によるものであつて、逸失利益の算定にあたり右特別償却を考慮に入れるのは妥当でないので、右工作機械についても他の機械類と同様に定額法による減価償却をなしたものとして算出したのが右認定にかかる所得金額である。)が認められる。

以上の事実によると、曲輪鉄工所としては、昭和三八年一〇月から昭和四二年一二月までの五一か月間に月一〇万円の割合による五一〇万円の純収益を得べかりしところ、現実には約一〇五万円<証拠>によれば、昭和三八年度の収入は七六二万八〇三三円、再算出所得は四八万二六一四円であるから、一〇月から一二月までの右収入八一万四五二三円に対応する所得は約七万円と算定する。)の純収益しかあげ得なかつたことになるが、この減収は、原告の前記傷害および後遺症による労働能力の喪失にのみ基因するものではなく、経済界の好・不況、主たる発注先である前記株式会社関口製作所の経営方針の変化等による影響も考えられるので――昭和三九年から昭和四一年にかけて原告の症状がむしろ悪化し、原告が曲輪鉄工所の事業活動に関与する程度が減少したことを認めるに足りる証拠はなにもないにもかかわらず、この間収入の変動がほとんどないのに純収益に大幅な差異がみられるのは、このことを如実に物語るものというほかない――、右差額四〇五万円のうち一か月六万円の割合による三〇六万円の限度で本件事故との間の相当因果関係を認めるのが相当である。

ところで、右の減収状態は、原告の前記後遺症(編注、自賠法等級七級四号該当)の程度から推して、本件事故の発生日から一〇年後である昭和四七年九月まで継続するものと推認される。

そこで、以上の事実に基づいて、原告の労働能力の喪夫を金銭的に評価すると、次のとおり六七四万二二九六円となる(ただし、年五分の割合による中間利息の控除は、原告の遅延損害金の請求が昭和四二年一二月二五日以降であること等を考慮して、のちの五年間分についてのみ年別複式ホフマン法によることとする。)。

6万円×12か月×(5+4.3643)=674万2296円

(倉田卓次 並木茂 小長光馨一)

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