東京地方裁判所 昭和42年(ワ)3118号 判決
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〔判決理由〕二、(責任の原因)
(一) <証拠>を総合すれば、次の事実を認めることができる。
1 被告吉井は肩書地(旧表示は葛生村字大字葛生二、七一一番地)において本件事故よりも五、六年位前から数台の貨物自動車を保有して専属的に被告会社の下請けをして、いわゆる白ナンバーによる採石等の運搬を業として来ている者である。
2 そこえ相沢正が昭和四〇年四月頃運転手として稼働することに話がまとまり、宮城県仙台市より被告吉井方へ住込み稼働し、被告吉井の指示に従い、被告会社の運搬の業務に運転手として、被告吉井の支配下にある数台のトラックと同様に従事していた。住民登録上も相沢正が被告吉井方との続柄につき「使用人」として同年五月三一日付で登録されている。
3 その後同年九月訴外栃木ふそう自動車株式会社より所有権留保付きで代金二七五万をもつて加害車が購入された。その購入名義は相沢正となつている。代金の支払は頭金を入れたほか残金二〇五万円を月賦弁済する約束となり、その債務につき被告吉井が保証した。その自動車検査証には使用者として「相沢正、栃木県安蘇郡葛生村大字葛生二七一」(この住所は被告吉井の前記住所地)(旧表示)と同じである。)、所有者として「栃木ふそう自動車株式会社、宇都宮市上横田町一、三一四」、使用の本拠の位置として「使用者住所地」、自賠責保険契約者として「相沢正」と記載されてある。
加害車の車体には被告会社を表わしている「東京石灰工業KK」、「東京石灰」、「東石」等と大書きされてあり、かつ、被告会社のマークや電話番号までも記されてあつた。それと比較して極めて小さく運転席の右後部に「相沢商店」と表示されてあつた。
4 以後、相沢正は被告吉井の指示の下に加害車を運転して被告会社の指揮どおりに採石等の運搬の仕事を専属的にして来て、月給金四万円位を支給されていた。折にふれて被告会社以外の物を運搬することはあつても、それは極く例外的であつた。
なお被告会社には三台しかトラックがなく、運搬のために他に四〇台位のトラック(白ナンバー)を加害車と同様に依頼して事業を営んでいる実情にある。
5 被告会社の採石を運搬して帰る途中に本件事故が発生した。
6 後記認定のとおり原告と相沢正との間で示談が成立し、その内金八〇万円の支払につき昭和四一年八月三〇日「債務弁済契約公正証書」が相沢正と訴外佐藤富久治(原告の代理人)の両名出頭して作成された。その相沢正の肩書に「吉井運送店々員」と明記されている。
(二) 右認定に反する<証拠>は、いずれも措信しない。その他これを覆すに足りる証拠はない。
なお証明書をもつて相沢正は被告吉井の単なる下宿人にすぎないことを立証しようとしている。しかし、その形式からみて、単に署名を集めたにすぎないと認められる。のみならず<証拠>によれば、事故後、加害車は昭和四一年三月二五日付で廃車され、同年四月一一日付で新車(栃一せ五八三〇)を訴外栃木ふそう自動車販売株式会社(加害車を購入した処)から買入れて、従前同様、相沢正をして被告会社の採石運搬に当らしめていたこと、その新車の買入れにつき買主名義人とその連帯保証人とにつき相沢正と被告吉井とが入乱れているけれども、いずれにせよ被告吉井としても新車の代金の支払につき全責任を負う契約をしていることなどを認め得る。この事をとつても、示談金の調達も不十分な相沢正に対し更に新車の買入れ代金につき責任を負担するということ自体が単なる下宿人と寄宿先との間でなすべき範囲では到底考えられず、却つて被告吉井が雇主であり、かつ、加害車の運行供用者であつたことを推測せしめているといえる。従つて丙第一号証をもつて、相沢正を被告吉井方の下宿人であるという証拠とは措信できない。
次に保証書には「相沢正が加害車を被告吉井保証のもとに買入れたが、相沢正の親族たる大森、加藤、菅野の三名が連帯保証して被告吉井には迷惑をかけない」旨、及び、その作成日付が「昭和三十九年十二月二十九日」と記載されてある。この書証は全部被告吉井側で執筆し、右三名に捺印をもらつた形式をとり、右日付の日に作成された書面である旨被告吉井は断言したこと、そうすると右日付は加害車を購入する九カ月も以前の日となり、相沢正と被告吉井とが関係を生ずる以前の時期となること、この矛盾をつかれた被告吉井は何らの弁解もできなかつたこと等を弁論の全趣旨によつて認め得る。従つて本訴請求を免れるべく後日作成されたものであることを日付の点からだけみても露呈しているので、丙第二号証も措信しない。
(三) 以上の認定事実によれば、形式上は相沢正が独立した運送業を営んでいるように作り出されている面があるけれども、実質的にみるならば、被告吉井が被告会社の専属的下請人として自己の従業員を貨物自動車と共に被告会社の採石運搬の業務に従事させており、相沢正も、その一人として被告両名の有機的相互間の指揮監督の下に専属的に加害車を運転して被告会社の採石運搬の業務に従事していた者であり、かつ、本件事故は被告会社の指示に従い積荷を運搬し終えて帰る途中の、前認定のとおりの態様の本件事故であるから、被告両名は自賠法第三条による損害賠償責任を負担すべきものと解するのを相当とする。
(竜前三郎)