大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)3145号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕

一 (事故の発生)

昭和四〇年三月一二日午後二時ごろ本件板囲いの板が倒れ道路を通行中の原告に当つて原告が負傷したことは<証拠>によつてこれを認めることができる。

二 (本件板囲いの占有者について)

原告は、本件板囲いの占有者は被告である旨主張するので、次にその点について判断する。

被告が土木建築業者であることおよび被告が本件板囲いを築造したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、本件土地を所有していた訴外清水市太郎(以下市太郎という。)の女婿訴外原川忠治は、同日午後二時三〇分ごろ警視庁淀橋警察署新宿二丁目派出所から直ちに出頭するよう電話があつたので、同派出所に赴いたところ、司法巡査訴外茅場通男から本件事故の発生を知らされたこと、右原川は、かねて被告が本件土地にビルの建設工事を請負つて本件板囲いを築造したと聞いていたので、被告に本件事故の発生を連絡したところ、被告が善処することを約したこと、被告は同月二二日ごろ原告からの連絡により被告の営業部員訴外田沼貢を原告方に派遣したこと、原告方を訪れた右田沼は本件土地を被告が管理していることを認めて原告に本件事故が発生したことを謝罪し、被告の方で医師を手配することを申し出たことおよび原告は、翌二三日ごろ被告本社に行つたところ、被告の社員が自動車で原告を田園調布中央病院に連れて行つて治療を受けさせ、その費用を支払つたことを認めることができる。しかし、他方、本件土地が市太郎の所有にかかるものであることは右のとおりであり、<証拠>によれば、市太郎が社長をしていた訴外会社は財団法人首都圏不燃建築公社と提携して本件土地上に中高層付長期分譲住宅を建設することになつたこと、しかし、本件土地上には市太郎方の木造建物が存したので、右建設工事に着手するに先だち右木造建物を取り壊さなければならなかつたこと、訴外会社は、右取壊し工事にあたり後に施行する右分譲住宅の建設工事の際の囲いを兼ねて本件土地の道路端に板囲いを築造することしたこと、訴外会社の右分譲住宅の建設資金の不足分は、一部を住宅金融公庫から融資を受け、一部を被告が負担すること、また、右分譲住宅の建設工事は右公社から被告が請負う話になつていたこと、そのような関係で被告は訴外会社から右板囲いを築造する依頼を受け、同年二月上旬本件板囲いを築造したこと、本件板囲いは長さ二メートル、巾一メートル、厚さ八センチメートル程のベニヤ板を並べて鉄製パイプの柱に緊結金具でしめつけたものであること、右木造建物の取壊し工事は訴外会社がしたこと、本件事故のころは未だ右取壊し工事は完了していなかつたこと、右公社と被告の右分譲住宅建設の工事請負契約は同年九月二八日に締結されたこと、本件板囲いを築造した費用は右契約の請負金額の中に入れたことおよび被告が本件土地で工事をはじめたのは右契約以後であることも認めることができ、しかして本件板囲い程度の板囲いの占有は、特段の事情のない限りそれが設置されている土地の占有に包摂されると解されることを考えと、右の本件板囲いを被告が築造し、被告の社員が本件土地を被告が管理していることを話し、あるいは被告が原告の治療を引き受けたことから原告の右主張事実を推認することはむずかしく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。(並木茂)

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