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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)4390号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、請求原因第一項(一)ないし(四)は当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、同原告は本件事故により顔面、両上肢、左膝、左耳打撲兼擦過傷、左肘部挫創、左第三、六、七肋骨々折、胸鎖関節脱臼の傷害を受け、昭和三六年五月一七日より同年七月二一日まで江東病院に入院治療を受付、その後同年一一月二〇日迄同病院に通院治療したが、顔面右頬部に外傷性瘢痕が残つたため昭和四二年一月二五日から同年二月九日まで十仁病院に入院し植皮手術を受けたことが認められる。

二、請求原因第二項(一)のうち被告会社が甲車を所有していたことは当事者間にも争いがない。従つて、被告会社は自己のため運行の用に供していたものというべきである。

三、そこで、本件事故の態様について判断する。原告らが当初事故の態様につき、甲車が乙車の右前方約一九米先を進行していたこと、日曹製鋼株式会社通用門に入ろうとして左折したこと、原告間宮を路上に転倒せしめたと主張したのを、甲乙車が約三〇米位並進し、被告会社の通用門に入ろうと左折した甲車は乙車を引つかけ車台下に乙車もろとも原告間宮を捲きこんだ旨の主張に訂正したことにつき、被告は右は自白の撤回につき異議があるというのでこの点につき先づ考える。

裁判上の自白の対象となり裁判所及び当事者に対し拘束をもつものはいわゆる主要事実に関する自白に限られたいわゆる間接事実や補助事実に関する自白は含まれないと解されるところ(最判昭和三一年五月二五日民集一〇巻五七七頁参照)、甲、乙車の進行状況は被告平間の過失の有無という主要事実に関し、この事実認定の資料となり得べき、いわゆる間接事実に過ぎないのであつて、この事実についての自白があつたとしても、裁判所はこれに拘束されることなく、当事者が後に訂正することもさしつかえないものというべきである。さらに日曹製鋼株式会社を被告会社と訂正したことは単に表示の訂正と見るべきで衝突後の事情についての主張の訂正も間接事実についての訂正としていずれもさしつかえないものと解すべきである。<中略>

六、時効の抗弁について、

被告会社が原告間宮に対し、本件事故後昭和三七年一二月二〇日、昭和三九年ないし同四〇年初頃、同四二年一月、同年三月九日にそれぞれ治療費の支払をなしたことは当事者間に争いがない。交通事故に基づく損害は死・傷そのものであり、損害賠償請求権は、治療費等の積極支出、逸失利益、慰藉料請求権といつた別個に生ずるものでなく、一個の請求権が生ずるに過ぎないと解すべきである。しかして、右の請求権の一部に当る治療費につき加害者が弁済をなしたときは、全体につき損害賠償債務のあることを承認したものとみるべきであり、このとき消滅時効は中断されたものとみるべきである。従つて、被告の時効の抗弁は採用し難い。(荒井真治)

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