大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和42年(ワ)5556号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告の主張は、要するところ、仮処分決定に対し異議申立がある場合、当該仮処分の執行取消決定をなすことは法律上許されないにもかかわらず、公務員たる豊島簡易裁判所裁判官は前記仮処分決定をなした違法があり、その結果原告は精神的苦痛を受けたので、被告に対しその損害の賠償を求めるというのであるが、本件仮処分決定は前記のとおり、債権者に終局的満足を得せしめるいわゆる明渡断行の仮処分の一種であるところ、仮処分判決に対し上訴がなされた場合、仮処分が債権者に終局的満足を得せしめ、もしくはその執行により債務者に対し回復することのできない損害を生ぜしめる虞ある場合には民事訴訟法第七五六条、第七四八条に従い、同法第五一二条を準用して、申立によりその執行停止決定をなしえないものでないことは、既に最高裁判所の判例とするところであつて(最高裁判所昭和二五年九月二五日決定、民集四巻九号四三五頁、なお、同裁判所昭和二三年三月三日決定、民集二巻三号六五頁参照)もとより右決定を精読すれば、仮処分判決に対する執行停止決定に限らず、仮処分決定に対する執行取消決定をなしえないものでないことも、事実を要しないところである。原告の主張はいずれも独自の見解に出るものであつて、採用の限りではない(原告は仮処分執行取消決定は、執行停止決定と異なり、執行期間との関係上、再度の執行を全然不可能にするものであり、執行停止決定に関する前記最高裁判所判例は、執行停止決定については妥当でないと主張し、執行取消決定は、単に既になした執行処分を取消す効力を有するに止まるものでなく、当該仮処分決定の執行をも許さない効力を有するものであり、当該執行取消決定の存続する以上、同一仮処分決定に基づき再度の執行をなし得ないことは原告主張のとおりであるが、仮処分取消決定は、仮処分決定そのものを失効せしめるものでなく、仮処分執行取消決定が即時抗告により取消され、又は仮処分異議訴訟において当該仮処分が認可される場合には、その時から再度執行に着手することができ、この場合民事訴訟法第七四九条第二項の期間は、再度の執行に着手することができるようになつた時から進行するものと解すべきであり、このことは仮処分執行停止決定の場合と何ら異なるところはないのである。また右に述べたところから仮処分執行取消決定がなされた場合にも、仮処分異議訴訟が無用のものとなるものでないことは明らかである。さらに原告は、仮処分執行が取消され、仮処分異議訴訟が係属しているうちは、債務者は仮処分の制約を受けないかわりに、債権者は新たな仮処分を得ることもできず、全く不利な立場におかれると主張し、仮処分異議訴訟が係属中は、債権者はさらに同一の被保全権利、保全の必要に基づき同一の態様の仮処分を申請することは民事訴訟法第二三一条の準用により許されず、その間債務者が執行取消にかかる仮処分決定の趣旨に反する行為をし、又は債権者が著しい損害を避け得なくなる虞があることは、原告主張のとおりであるが、元来、仮処分決定の執行の停止、取消を例外的にせよ認める見解は、右停止、取消決定が実質上は仮処分決定そのものの取消と同様の効果をもたらすものであるにもかかわらず、保全訴訟における当事者の公平をはかるうえから、なお、これを許容すべきものとするのであつて、かかる虞の生ずることをふまえての結論であるばかりか、執行停止、取消中に、なお保全の必要が生じそれが既になされた仮処分の決定と異なるものと認められる場合には、さらに新たな仮処分を申請することができるのであるから、原告の右主張も理由がない。)(柏木賢吉 長利正己 加藤英継)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!