東京地方裁判所 昭和42年(ワ)9045号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕そこで、受働債権が差押または仮差押を受けた場合、第三債務者が相殺を以て差押債権者に対抗しうるためには、差押または仮差押当時第三債務者が相殺適状にあつて債務を消滅せしめうる反対債権をもつていたときでなければならないとの説をとるときは、本件の場合それがたまたま同一日なので、その時間的先後について更に詳細な審理を経ななければならなくなる。しかしながら、右の説はいたずらにせまきに失し、右の如く差押もしくは仮差押当時、二つの債権が相殺適状にある場合はもちろん、そうでない場合にも、差押仮差押前に取得した反対債権の弁済期が被差押債権のそれより先である場合には、反対債権を以てする相殺を認めるのが正当である。けだし、第三債務者が差押、仮差押前から債務者に対し反対債権を有し、その弁済期が被差押債権の弁済期より先に到来する場合には、通常債務者に対する自分の債務は弁済期が到来すれば反対債権と相殺して清算しうると予期しているであろうから、かかる期待的利益を自己になんの責任もない差押という行為の介入によつて奪うべきでないからである。
民法五一一条もひつきよう、かかる法理を第三債務者からなす相殺につき消極面から規定したものと解せられる。そうすると、本件は仮差押当時、自働債権の弁済期はすでに到来していたのであるから、被告の右債権による相殺が原告に対し対抗しうるものであること明らかである。(海老沢美広)