東京地方裁判所 昭和42年(借チ)14号 決定
〔主文〕当事者間の別紙(二)記載の借地契約の内容を別紙(三)記載のとおりに変更する。
申立人は相手方に対し金一二一万七〇〇〇円の支払いをせよ。
〔決定理由〕本件土地は(1)日本橋通り(旧都電銀座線通り)の都電日本橋交叉差点と高島屋百貨店のほぼ中間あたりの八米道路を東に五〇米ほど入つた個所の道路の南側にあり(間口約四米)(2)前記借地契約締結後の昭和二六年三月二三日防火地域の指定がなされ現在に至つているほか現在商業地域第七種容積地区に指定されており、(3)かつ右契約締結当時附近の土地は概ね木造建物であつたが、近時次第に堅固な建物に改築されて来ており、本件土地の東隣側こそ未だ木造建物が見受けられるが南側および西側はその隣地まで概に殆んど堅固な建物になつてきているし、(4)申立人の計画によれば、本件土地上に建築関係法規の範囲内で鉄筋コンクリート五階建の店舗兼事務所を建設する予定であるところ、本件土地の面積は狭いけれども右計画は建築技術上可能であることがそれぞれ認められる。
以上の各事実によれば、本件借地契約締結後事情に変更が生じ本件土地につき現在借地権を設定するとしたら、堅固の建物所有の目的とするのが相当になつて来たというべきであるから、当事者間の本件借地契約を堅固の建物所有を目的とするものに改めるとともに、それに伴い存続期間が当然変更されることになるのでその点を明確にし本件借地契約の借地条件を別紙(三)記載のとおりに変更することとする(賃借権の目的土地である本件土地が三三・五二平方米(一〇・一四三坪)という比載的狭いものであるということは右結論を動かすものとは考えられない)。
三 そこで、次に当事者の利益の公平をはかるための附随の処分について検討する。
(一) この点につき鑑定意見は本件借地契約の目的を非堅固な建物所有から堅固な建物所有に変更する場合には更地価格の一〇%相当の対価を申立人より相手方に払う必要があるとしたのち本件土地の三・三平方米当りの更地価格を一二〇万円と査定しその一〇%の合計額一二一万七〇〇〇円(一〇〇〇円未満は切捨て)を相手方に支払うべきものとし(2)賃料額については従前の値上げの推移、近隣の賃料との対比等から現時点では値上げの必要はないものとしている。
(二) そこでまず財産上の給付についてみると前認定の如き本件土地の位置、環境、地形等より考えて三・三平方米当り更地価格一二〇万円という鑑定委員会の評価は妥当なものであると認められるが、ただ財産上の給付額をその一〇%相当とすることはやや高額のようにも考えられ、かつ本件で調べた資料によれば、〔賃料額=編者注〕改訂の推移は決して低額であつたとはいえないことが認められるのであるが他方本件借地契約の際及びその後の更新の際等に申立人より相手方に対し財産上の給付がなされていないことが認められるうえに、本件土地の使用目的が堅固の建物所有に変更されたのは、申立人はそこに鉄筋コンクリートの建物を建築することになるが、本件土地の位置環境等より考えて、それによる収益は比較的高くなることがうかがわれるのであり右事実のほか更に、その他本件における一切の事情を総合して考慮すると、本件の場合においては申立人より相手方に対し支払うべき財産上の給付額としては前記鑑定意見が示したところの更地価格の一〇%即ち本件土地の合計一二一万七〇〇〇円が相当であると認められる。
次に賃料についてみると近年の賃料額改訂の推移は前認定のとおりであるところ、右現在の賃料額ならば、本件土地の位置環境並びに本件における一切の情況を総合して考えると鑑定意見も指摘するとおり、借地条件を堅固な建物所有を目的とするものに改めたのちにおいても、現時点ではなお改訂する必要はないものと認められる。
四 よつて当事者間の別紙(二)記載の借地契約を別紙(三)記載のとおりに変更し申立人より相手方に金一二一万七〇〇〇円の支払いをするよう命ずることとして主文のとおり決定する。(渋川満)
別紙
(一)(借地権の目的土地)
東京都中央区日本橋通二丁三番地七
一 宅 地 一一四・七七平方米(三四・七二坪)
のうち 三三・五三平方米(一〇・一四三坪)
(二)(従前の借地契約)
1目的土地 右(一)表示の土地
2契約の種別 賃貸借契約
3契約の目的 建物の種類及び構造の定めなし
4契約の年月日 昭和二〇年二月一日
5存続期間 契約締結の日から昭和四〇年一月三一日までの満二カ年間。但し昭和四一年四月八日法定更新によりその日より満二〇年間(昭和六二年四月七日まで)
6現在の地代 一ケ月一一、〇〇〇円
(三)(変更後の借地契約)
右(二)の契約中契約の目的ならびに存続期間を左のとおり変更(その余の点は(二)に同じ)
契約の目的 堅固な建物の所有
存続期間 更新の日(昭和四一年四月八日)から満三〇年(昭和七一年四月七日まで)。