東京地方裁判所 昭和42年(借チ)2065号・昭42年(借チ)2071号 決定
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〔決定理由〕(2) まず本件借地権の価格についてみるに、鑑定委員会の意見は、(イ)いわゆる市場資料の比較、近隣の借地権割合の検討等に基づき本件土地の更地価格を三・三平方米当り一六万〇七〇〇円、計六四八万二六〇〇円、借地権価格(後述の本件契約の特殊事情を考慮しない場合として)を三・三平方米当り一二万円計四八四万円と評価している。(ロ)そして、本件においては残存期間が約五年余りで地上建物の残存耐用年数もそれ程長くないので、右事情を考慮し一七万五、〇〇〇円を減ずべきものとし、結局借地権価格を四六六万五、〇〇〇円とし、(ハ)さらに地主が買受ける場合で、かつ本件借地権価格がいわゆる自然発生的なものであることを考慮し、相手方の買受ける対価としては、前記金額から名義書換料に相当する前述(イ)の借地権価格の一二%(五八万円)を控除した四〇八万五〇〇〇円を相当とするとしている。
当裁判所も、本件土地の借地権価格は右意見のとおり三・三平方米当り一二万円、計四八四万円をもつて相当と考える。そして、右意見に指摘されている各事情を考慮し、本件買受の対価としては相当の減額をすべきものと考える点でも、鑑定委員会の意見と同様である。
ただ、前記意見は、本件借地権の残存期間が約五年半で、地上建物の耐用年数が短かい点から、五年半後の期間満了時に支払うべき借地権価格の五%の更新料を基礎とし、その現在価格を求めて得た一七万五、〇〇〇円を前記価格から控除すべきものとしているが、この点については算定方法として問題がないわけではないと思われる。本件においては、期間満了の際、相手方が容易に更新を承諾しないであろうと推認されるが、現在の事実関係から予測する限り、右満了の際相手方において右土地を必要とするような格別の事情も窺えず、更新拒絶の正当の事由はたやすく肯認し難いと思われ借地法の規定により更新される可能性が強いと考えられる。しかし、地上建物は前判示のとおりであつて、残存期間内に朽廃するとまでは考え難いが、本件賃貸借が法定更新された場合でも、やがては右建物の朽廃による借地権の消滅を来たすことが予測されるのである。かように本件借地権は、地主の態度如何により、さほど遠くない将来において消滅に至るべきことが予測され、地主において、かなり実現性の濃いものとしてこれを期待しうるものと考えられる。もとより右の判断には将来の不確実な要素が含まれ、これを借地権の評価に的確に反映させることには困難があるが、本件対価の算定に当りこれを度外視することは相当でないと思われる。そしてその算定にあたり将来支払わるべき更新料の現在価格の控除という方法によるのは必ずしも妥当でなく、また控除すべき額も前記意見よりもやや多額であつて然るべきものと考えられる。
次に、前述のような高額の借地権価格が形成されるに至つたのは、社会経済事情の変動に基づくもので申立人は本件借地権の取得にあたり格別権利金等の支払をしていないことその他借地の従前の経過に徴すると、衡平の見地から、本件借地権の処分による利得の相当の部分を相手方に配分する趣旨で本件対価の決定にあたり相当の減額をすべきことは鑑定委員会の意見のとおりと考える。
結局当裁判所は、上述の各減額の事由を合わせて、前判示の借地権価格四八四万円からその一八%に当る金額を減額した三九七万円(端数切上げ)をもつて相手方の支払うべき、借地権の対価と定めるべきものと判断する。(安岡満彦)
目 録
(一) 土地
東京都目黒区目黒本町六丁目二五五番四
宅地 五〇七・六〇平方米
(一五三・五五坪)のうち
一三三・三五平方米
(四〇・三四坪)
(二) 借地権
右土地を目的とし、賃貸人を嶋淑郎、賃借人を木村三郎とする賃借権(非堅固建物所有目的・期間昭和四八年六月二五日まで)
(三) 建物<略>